タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

鵜の目鷹の目の視力

 「鵜の目鷹の目」という慣用句があり、熱心に物を探すさま、またそのときの鋭い目つきを指す言葉である。鵜の方は近くを、鷹の方は上空から遠くを狙う様子が想像される。今日は、鷹の視力がどのくらいか調べた。
 本題の鷹の視力に入る前に、視力の1.2とか1.5とかがどう定義され、それがどの程度の視認能力なのかを説明する。

 視力検査は通常、フランスの眼科医ランドルトが考案したランドルト環(アルファベットのCの形の環)によって行われる。視力の基準は、このランドルト環のスキマの高さが目に入る角度を視角として、視角が1度の60分の1、すなわち1分を感知できる視力を1.0と定めてある。5m先から視力検査表を見た場合、視角1分はランドルト環のスキマ1.5mmに相当する。視力は視角の逆数で定義されており、視角50秒のランドルト環スキマを感知できる視力=60/50=1.2となり、視角2分の場合は 視力=1/2=0.5となる。昔から、視力1.0の上が1.2、その上が1.5、その上が2.0であることを特に不思議に思っていなかったが、これは60進法で表す視角の逆数であり、視角50秒が1.2、視角40秒が1.5、視角30秒が2.0にそれぞれ対応していたわけである。

 次にいよいよ鷹の視力についてであるが、ネット検索したがヒットする記事は見当たらなかった。しかしながら同じ猛禽類であるイヌワシについて以下のような記事が見つかった。
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ヒトは、中心窩に1平方mm当たり約20万個の視細胞を持っているのですが、イヌワシはおおよそ7.5倍の約150万個の視細胞を持つといわれています。
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この記事によれば、イヌワシの網膜上の視細胞の単位面積当たりの数は、人間のそれの7.5倍とのことなので、単位長さに換算すると7.5の平方根、すなわち2.7倍の細かさで視細胞がびっしり詰まっていることになる。すなわちこれは、イヌワシが人間に比べて1/2.7の小さな視角まで感知できることを意味しており、1/2.7のランドルト環スキマを感知できる分解能を持つことになる。
 ここで標準的人間の視力が1.5であり、視角40秒を感知できる能力を持ち、イヌワシがこの2.7倍の分解能があるとして計算すると、イヌワシの視力は 1.5*2.7=4.0 となり、感知できる最小視角は 40/2.7=15秒 となる。
 次に、視力が4.0とか感知可能最小視角が15秒と言われてもピンと来ないので、イヌワシが狩りをする想定でこれがどれほどの能力かを計算してみた。
 イヌワシが1000mの上空から地上の獲物を狙っていたとする。視力1.0は、5m離れて1.5mmを識別できる能力だから、その200倍の1000m離れた時は、1.5*200=300mm が視力1.0の最小識別長さ(分解能)となる。そして、イヌワシの視力4.0は、この4倍の視力を持つことになるので、識別最小長さは75mm(300/4=75mm)となる。75mmは、だいたい野ネズミの大きさに相当する。イヌワシは1000m上空から、野ネズミが動き回る様子を、点の動きとして視認できることになる。
 鷹もイヌワシと同じ猛禽類ワシタカ目で、同程度の視力を持っているだろう。よって、今日の調査の結論としては、
「鷹の視力は4.0で、その視認力は、1000m上空から75mm程度の小動物を点として感知できる能力」となる。