タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

収入の枠内での生活が是か非か?

 今日お昼のTV番組で、今騒ぎとなっている水原一平氏の賭博損失額が62億円と聞かされ唖然とした。2021年12月から2024年1月までのおよそ2年間で、賭けに勝った総額が218億円、負けた総額が280億円とのこと。ギャンブル依存症は勝った時の記憶がいつまでも残り、『今度こそ勝てる』と思い深みに嵌ってしまうのだろう。それにしても、一人の一般人がそんな大金を動かせる現代は、考えようによっては恐ろしい時代である。
 FXでは、証拠金として預けた資金の何倍(最大25倍)もの金額の外国為替取引が可能である。このように少ない資金で多額の外国為替取引ができることを、「てこ」の原理になぞらえて「レバレッジ効果」と呼んでいる。もし、手元に10万円の資金があれば250万円の為替取引が可能となり、儲けも損失も25倍に膨れ上がる。金融の世界では、この「レバレッジ」を使った金額膨らまし効果もあり、世界中で昼夜を問わず大金が飛び交っている。
 私は個人的には、『収入の枠内で人並みの生活ができればそれで良いのではないか』と思っている。この「収入の枠内」という考えは、一般の日本人の標準的な考えに思える。一方で米国では、住宅に限らず様々な物品をローンを組んで購入するから、同じ「収入の枠内」と言っても、生活の営み方は随分違ってくる。
 さて、これら家計での「収入の枠内」という考え方を、そのまま国家の財政運営に持ち込むと国の経済運営に大きな支障を来たすことになる。何故なら、家計においては、収入の枠内での生活(収入>支出)があるべき姿であるのに対し、国家の財政運営においては、むしろ、赤字運営(収入(税収+税外収入)<歳出)の方が望ましいからである。それでは何故、家庭と国家の間でこんな差が生じるのであろうか? この理由を理解するのはなかなか難しいが、ヒントは、貨幣の本質を知るところにある。その本質とは、「お金は国が借金することで生まれ、その借金を返すことで消える(注)」という俄かに信じ難いところにある。この本質が分かれば、国が国債を発行して借金をすることでお金が新たに生まれ、その新たに生まれたお金で経済が成長することが理解できる。そして、逆に国が借金を返せば、国の中を流通するお金の量が少なくなり経済がシュリンクすることも理解できる。従って、インフレにならない程度に国が借金を増やすことは「善」であり、そんなことも分からず借金を減らすことは「悪」となる。
 財務省は、この「収入の枠内での財政運営(=プライマリーバランスの均衡化)」を広く国民に訴え、大多数の国民は、これが間違った政策とは気付いていない。むしろ、真面目な日本人は、国家においても倹約は正しい道で、国家の赤字は悪だと信じている。そして、国民ばかりでなく、ほとんどの政治家も、財界も、マスコミも、プライマリーバランス均衡化が悪政だと気付いていない。
 私としては、間違った政策で貧困への道を歩み続ける日本を見ているのが何とも歯痒いのだが、真実は一つ、その内皆分かってくれる日が来るだろう と思うしかない。

(注)正確に言えば「お金は誰かが借金することで生まれ・・・」となるが、その誰かの大元になるのは国であり、国家が国債を発行することでお金が生まれることになる。日本が高度経済成長をしている頃は、企業が大量に借金をしてお金を産みだし経済が回っていたが、デフレ期には借金を返し負債を減らして体質強化に走ったので、市中を流れるお金がどんどん減っていった。国債残高が1400兆円に膨らんだと喧伝される裏で、家計の金融資産残高は2100兆円にまで膨らみ、この国民による貯蓄行為も市中を流れるお金の量を減らす方向へと働いた。