タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

日本経済はなぜ長期に停滞したか?

 昨日のブログでは、日本の賃金が長期に上がらなかった理由を以下の2点と結論付けた。
 1.金融緩和が不十分だった(アベノミクス開始までの期間)
 2.政府支出が不十分だった(バブル崩壊以降一貫して)
今日は、昨日の結論に経済学的肉付けを加えて吟味してみたい。
1.賃金上昇には物価上昇が必要か?
 エコノミストは、「賃金上昇には生産性の向上が必要」と言う。そして、例として日本の行政事務処理の非効率性を挙げたりして「電子化すればもっと効率的にできる」と言う。ここで重要なのは、「生産性を向上させるためには作業効率を向上させる投資が必要」という点であり、この投資がないと賃金上昇には辿り着けない。それでは、これ以上効率化できない「おもてなしのサービス」のような作業の時間当たり労働単価はどういう場合に上昇するのか? 今の日本において、インバウンド需要の高まりで旅行宿泊業界のあちこちで人手不足が起きており、実際賃金上昇が生じている。つまり、生産性の向上無しでも賃金が上昇する場合があり、経済学的には、需要と供給のバランスにおいて供給不足になった場合に賃金上昇する と言っても良い。ここで注意すべき点は、物の需給バランスは物品の価格に直ぐ反映されるが、労働の需給バランスは、賃金に一定の時間遅れをもって反映されるという点である。
 現在の日本は、コストプッシュインフレ(原材料高)で 物価上昇率が4%程度となっていて、賃金上昇率がこれに追いついてないが、これがデマンドプルインフレ(インバウンド需要のように需要が牽引するインフレ)になれば、少し遅れて必ず賃金が上昇する。つまり、人手不足を引き起こすような需要拡大があれば賃金は上昇することになる。
2.経済成長には政府支出の拡大が必要か?
 上述したが、賃金上昇には需要拡大が必要であり、需要拡大があればGDPが拡大して経済成長することになる。需要には内需と外需があるが、日本は内需がおよそ85%を占める内需主導の国である。そしてその内需の中でも大きなウエイトを占めるのが「政府支出」である。
 さて、「需要」というものは「支出」から生まれる。需要を拡大しようとすれば、支出を今まで以上に拡大しなければならないが、それには「借金」という日本人が嫌がる言葉が付きまとう。実を言うと、失われた30年のどこかで、日本がこの政府支出拡大をやっていたら、今頃は、経済成長して順風満帆な国になっていたであろう。重要な点は、「最初に借金ありき。借金から政府支出需要)が生まれ、経済(貨幣経済)が回り、最後に税収となって返って来る」である。
 最近、税収の上振れが話題になっているが、前年度ばかりでなく今年度も税収が予想以上に増える見込みとなってきた。今ここで、経済成長率がたとえゼロであっても、物価上昇率が4%であれば名目GDPは4%増える。そして税収は4%以上増えることになる。新型コロナ禍で失われた潜在需要が今年に入り顕在化して、日本経済に好循環の流れが見えてきた。災い転じて福となすで、どんなきっかけでも良いから、好循環の波にさえ乗れれば後は上手く行くであろう。
 日本の財政が健全であることは一昨日のブログで述べたが、日本がこの好循環の流れに乗り、物価上昇率2%、賃上げ率3%の状態を維持すれば、今の米国程度に経済成長する国になれる。そして、毎年増加する税収を前にして、財務省にも政府税調にも「増税」という言葉を口にする輩はいなくなるだろう。

P.S.
 本日、本年度補正予算の大枠が、総額13兆1992億円の中、国債増発が8兆8750億円と判明した。これを新聞等のメディアは「7割近くを国債で手当てする」とか「借金頼みの財政が続く」と否定的に報道した。メディアはザイム真理教が唱える教義をそのまま国民へ垂れ流す機関になっているため、こんな報道しかできないのはしょうがないことだが、岸田内閣が国民のため、8兆8750億円もの新規需要を作ろうとしていることを私は評価したい。