タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

日本の賃金はなぜ30年間も上がらなかったのか?

 世界の中で日本の賃金だけがこの30年間上がっていないと言われている。今日はなぜそうなったのか考えてみた。

 上図はG7各国の賃金の推移を表している。これを見ると、賃金の推移が3つのグループに分けられることが分かる。
 A:名目賃金も実質賃金も上がっている ・・・ 米、英、仏、独、加
 B:名目賃金は上がっているが実質賃金は上がっていない ・ 伊
 C:名目賃金も実質賃金も上がっていない ・・・ 日本
このグラフから一つの仮説が想定される
 仮説:賃金上昇には物価上昇が必要
   (賃金上昇は物価が上昇する経済下で起きる)

 90年代初頭のバブル崩壊で、企業には3つの過剰が生まれた。過剰設備、過剰雇用、過剰債務 である。これらは企業の存続にも大きく関係し、企業は軒並み守りの姿勢に入って、当然ながら従業員の賃金は伸び悩みとなった。

 上図は、バブル崩壊から30年間の為替レートと完全失業率の推移を表す。アベノミクスが始まってからの10年間は、為替が円安に動き、完全失業率も低下してきたことが分かる。失業率が高い間はベースアップもままならず、平均賃金の伸びはほとんどゼロに等しかったが、アベノミクスによる異次元の金融緩和が始まった後は雇用環境が改善したことになる。これを逆に捉えると、アベノミクスが始まるまでの20年間は、日銀の金融緩和が十分でなかったため、賃金上昇の下地が作られなかったと言える。これから、本日のテーマに対する理由の一つが浮かび上がる。
 理由1.バブル崩壊からアベノミクスが始まるまでの20年間は、金融緩和が不十分だったため、賃金上昇の下地(雇用の改善とデフレからの脱却)が作られなかった。

 一方、米国の経済学者で元財務副長官のローレンス・サマーズは、日本の長期停滞について、「過剰貯蓄や投資不足により均衡利子率が極端に低下し金融政策のみでは機能不全に陥っている」と解説した。彼の解説の中に出て来る、均衡利子率とは、貯蓄と投資をバランスさせる実質金利を意味し、今の日本が、超低金利の中でも投資意欲が湧きにくい環境であると言っている。これは、異次元金融緩和だけでは、この長期停滞から脱却できないことを意味する。

 上図は、G7の国々の政府支出成長率とGDP成長率との関係を示す。両者は高い正の相関関係にあり、国債を多く発行して政府支出をより多く増やしてきた国の方がGDPの成長率も高いことを示している。この図から以下のことが言える。
 理由2.日本は財務省の財政規律健全化方針に則り、政府支出を最低限に抑えてきたためGDPが拡大せず、その結果、賃金が30年間上がらない国になった。