タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

GDP速報の正しい評価

 昨日の日経平均株価は、今年最大の上げ幅を記録し3万3千円台を回復した。この景気の良い話が出た同じ日に、7月-9月のGDP成長率が年率でマイナス2.1%になったと速報値が出た。ニュースの見出しには「物価高で個人消費不振」との文言が目についた。今日は、内閣府から発表されたGDP速報の中身を精査した。

 上図は実質GDP成長率の推移(左)と 実質GDPの内外需要の寄与度(右)である。GDP成長率は前期の1.1%から-0.5%へと下がっていて、その要因が、「外需寄与度が前期の1.8%から-0.1%へと大幅にダウン」したことによるものだと分かる。

 上図は、外需となる輸出(左)と 輸入(右)の成長率の推移を表す。ここで注意が必要なのは、輸出の伸びはGDPの伸びにプラスに働くが、輸入の伸びはマイナスに働く点である。今期は輸出も輸入も伸びたが、輸入の伸びが前期のマイナスから今期はプラスに転じてしまったため、GDPに対する外需寄与度が大幅ダウンになり、その結果GDP成長率がマイナスに転じたことになる。これは、元々前期のGDP高成長が外需依存の特別なものであり、今期はその特殊要因が無くなっただけとも解釈できる。

 上図は個人消費(左)と民間住宅投資(右)の成長率の推移を表す。メディアが声高に主張する「個人消費不振」は、「個人消費は下げ止まり」と正しく理解すべきである。また、民間住宅投資が前期から大幅にダウンになっており、内需項目の中では他に民間設備投資や公共投資もマイナスとなっている。このようにして、メディアは、大してマイナス要因になっていないものを取り上げ、かなりのマイナス要因になっているものを無視して報道している。
 メディアの報道は、一般庶民が食いつき易いキャッチーな表現と内容になるのはしょうがないが、もうちょっと内容の正確性を高めてもらいたいものである。とにかく、このGDP成長率は、前期が標準か特殊かで評価が大きく変わるので、今後も注意して見ていきたい。

 さて、今後日本経済はどうなるのであろうか? 世の中の少なからずの経済アナリストやその道の専門家は、円安の進行は日本経済の弱さの現れとか、日銀がこのまま金融緩和を続ければ円札はいずれ紙屑になるとか、株高バブルはいずれはじけるとか、ネガティブな意見を色々おっしゃる。誰の意見が真実なのか全く分からない。しかし、ここで一歩引いて冷めた目で現状を見つめ直した時、私は、今進行中の確かな変化を感じる。それは、日本が今、デフレ経済からインフレ経済へ変わって行く最中にあるということ。失われた30年がやっと終わるという予感である。