タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

小さな政府で大きな政府の福祉レベルを実現する方法

 新自由主義とは、政府の経済への介入を抑え、自由競争によって経済の効率化や発展を実現すべきという考えを指す。一方で修正資本主義とは、資本主義が持つ様々な問題点を緩和し解消することで福祉国家を目指そうとする思想や体制を指す。
 また、小さな政府、大きな政府という考えもあり、新自由主義は小さな政府、修正資本主義は大きな政府を目指しているようである。今日は、小さな政府と大きな政府のいいとこどりをして、明るい日本の未来を描いてみた。

 上図は国民負担率の国際比較を示しているが、先進7ヶ国の中で 仏、伊、独は高負担、米、加、英が低負担、日本は両者の中間に位置する。ここで高負担は大きな政府を意味し、国民の負担率を高めて高福祉を目指すことになる。一方で新自由主義では、政府が行うことを必要最小限に抑えるので必然的に小さな政府となる。

 上図は国民負担率の推移を表す。日本は、失われた30年の間で次第に高負担に向かっていることが伺える。この間の推移は一般庶民にとっては、『負担は増える一方で福祉の度合いは逆に低下している』と思えることであろう。こんなことが何故起こるのか? 答えは、「国民負担率を上げれば経済が低迷して税収が減り(注1)、進行中の高齢化に返って耐え切れなくなるから」である。つまり、高齢化進行中の現在においては、政府の社会保障に関する支出を毎年一定程度増やして初めて従来と同程度の福祉レベルとなるのだが、その必要となる増額分を国民から徴収すると、逆に税収が減ることになり負のスパイラルに落ち込む結果となる。それではどうすれば良いのか?
 ここで登場するのが MMT(現代貨幣理論)である。この理論の代表的な主張をまとめると、以下の3つとなる。
・自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはない
財政赤字でも国はハイパーインフレが起きない範囲で国債発行し財政支出を行うべき
・税は財源ではなく通貨を流通させる仕組みである
MMTは、「政府がいくら国債を発行しても財政破綻はおきないと主張する間違った理論」と曲解され、著名な経済学者からも非難されているが、私が理解する範囲で言えば、「正しく理解すれば新しい経済財政運営の指南書となる理論」となる。このMMTに従って、高齢化にどう立ち向かえば良いか? を考えた時、答えは「政府の歳入(税収 および その他収入)にGDPの3%程度の金額を足し込んで予算総額とすれば良い」、そして「足し込む金額の全てを国債発行にて賄えば良い」となる。
 話を簡単にするため、今現在、日本のGDPは600兆円、歳入の中の税収が75兆円でその他収入が10兆円、合計85兆円の歳入規模であるとする。ここに600兆円の3%となる18兆円を加えた合計103兆円が来年度の一般会計予算となる。以下に一昨日のブログで示した来年度の一般会計予算を示すが、103兆円という予算規模は、下図の改善案予算(右側)とほぼ同程度となることが分かる。

 さて、MMTの理論に則り高齢化に立ち向かう予算を策定したわけだが、まず、この程度の国債発行額で財政破綻ハイパーインフレが起きないことは、コロナ禍での大量国債発行時に証明済みである。次に、国債発行により追加された18兆円(注2)がどう使われるかを考えてみる。防衛費に3兆円増額、異次元の少子化対策に3兆円、社会保障費に5兆円増額、地方交付税に4兆円増額、その他3兆円増額 と割り振ると、岸田政権のやりたい目玉政策が、「増税無し」かつ「社会保障負担増無し」で実現できることになる。次に追加された18兆円が、経済にどう働くかを考える。先日のブログで、政府支出の伸びとGDPの伸びは強い正の相関関係(ほとんど正比例と言って良い関係)にあると述べた。従って、政府支出を3%増やせばGDPも3%伸び、来年のGDP(名目GDP)は618兆円になると予想できる。経済が大きくなった分、通貨供給量を増やしても全く問題ないし、翻って考えれば、国債発行にて予算に追加された18兆円は、次年度の経済成長のための呼び水と考えることができる。そして、このGDP3%の伸びは、現実的には、物価上昇率2%、実質経済成長率1% にて達成されることになる。(注3)
 今日は日本の明るい未来を描くことができた。これは決して絵に描いた餅ではない。実現可能な一つの未来予想図である。

(注1)社会保障費に充てると言って何回も消費税を上げて来た
(注2)国債発行が無くこの方式に切り変えた初年度で追加される金額であり、次年度からは数兆円程度に下がる。必要となる増額分を得たい場合には、その額に応じて国債発行額を増やせば良い。
(注3)実際現実においては、上記前提に比べ、税収やGDP等の値が微妙に異なるため、国債費の18兆円がそのまま次年度のGDP増加額に一致するものではない。また、名目GDPの伸び率は景気変動物価上昇率に左右されるから、国債発行額を常にGDPの3%と定めることは良くないかも知れない。下表は、そういう細かい数値の違いや様々な変動要因を抜きにして、今後10年間の日本の成長をシミュレーションした結果である。

 このシミュレーション結果によれば、名目GDPは10年後に1.3倍程度に増えることになる。GDPとは国民の所得の総和であるから、各個人の給料も10年後には平均で1.3倍に伸びる計算となる。ただ、この計算は名目値の計算で物価上昇率を含んだ値になっているので、その点は注意が必要である。
 このシミュレーションが意味するところは、「経済成長率を上げたいのなら、国債を発行して政府の支出を上げれば良い」である。もちろん、MMTが主張する「ハイパーインフレが起きない範囲で」である。