タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

GDPと資本(お金、株、土地)との関係


 上は、いつものウォーキングコースの一角で始まった宅地造成の様子である。近々、20軒ほどの戸建て用宅地が整備されるであろう。この写真の反対方向(背側)には、道路を挟んで、昨年売り出した十数軒の新築住宅が建ち並び、現時点で3軒が入居済みである。富山県の人口が今年中に100万人を切ると言われている人口減少の中、こんなに沢山住宅建設をして良いものかと、他人事ではあるが心配になる。きっと、経営者の脳裏には、金利が低い今のうち、地価が上がっていない今のうちに建てておいた方が良い との動物的勘が働いているのだろう。
 今日は、お金がどのように回ってGDP(国内で1年間に産み出される付加価値の総量)が産み出されるかを考えてみた。

 上図は、先日示したマネタリベースとマネーストックの関係である。GDPは、このマネーストック領域の中で産み出された付加価値を金額換算したものと考えられる。金額換算は商取引や利益の分配時に行われるので、従ってGDPとは、1年間で流通したマネーストックの量とも定義できる。現時点で日本のGDPはおよそ600兆円であり、マネーストックは1103兆円だから、この両者の比率 0.54(GDP/マネーストック)は、GDPを産みだすためマネーストックの何割が使われたかを示す指標となる。そしてこの指標は、経営効率の指標として使われる「資本回転率」と似た概念になる。今ここで、この比率を「マネーストック回転率」とすれば、日本という国は、マネーストック回転率が低い(経営効率が悪い)国となる。現在のこの比率54%は、残りの46%がGDP(付加価値の産出)には寄与せず、貯金として眠っていることを意味する。このような見方で日本と米国を比較すれば、日本は貯蓄率が高いアリの国で経営効率が低く、米国は企業も個人も借入金で経済を回すキリギリスの国で経営効率が高い となる。
 さてここで、この図に表されていない2つの大きな資本がある。「株」と「土地」である。株価や地価がいくら上がっても、それらの売買は名義人が変更になっただけで付加価値を産み出していないと考えられのでGDPには計上されない(売買手数料(=証券会社や不動産会社の儲け)はGDPに計上される)。この辺りが理解できると、株価がいくら上がっても、それは実体経済の活性度と直接関係がない別の世界の話であり、我々の給料が上がるわけではないことが納得できる。
 株や土地の売買はGDPに含まれないが、一方でGDPに含まれるものとして「帰属家賃」という特殊なものがある。借家に住む人は家賃を払い、この家賃は当然GDPのカウント対象となる。一方で、自分が所有する家(持ち家)に住む人は、ふつう、自分の家に家賃を払わない。しかしながら、GDP計算においては、持ち家に住む人は自分の家に家賃を払うと見なし、この家賃を「帰属家賃」として算出しGDPに含めている。(算出は、持ち家を賃貸とした場合の家賃として計算される)。何故こんな操作をしているかと言えば、賃貸から持ち家に、あるいは持ち家から賃貸へ変わった時のGDP変動を解消し、GDPを住居形態に依らなくするためである。帰属家賃個人消費の一部としてGDPの約1割も占めると言われており、結構大きなGDP構成要素となっている。現在、首都圏の家賃料は値上がりしており、これは首都圏の帰属家賃が増大することを意味する。そしてこれは、我々の意識しないところでGDPが成長することを意味する。また、地価は間接的に家賃に影響するので、地価の上昇はGDPを押し上げる要因となる。一昨日に米国の賃貸料が高騰している話をしたが、GDP成長は、こういう水膨れの要素を含むことになる。