タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

財政規律第一主義の問題点

 昨日のブログでは、財務省が唱える財政規律第一主義に対し疑問を呈した。今日はそのザイム省の教義のどこに問題があるかを考えてみた。経済学者 高橋洋一氏は、劣悪な財政状況だと主張する財務省に対し、「日本の財政状況は健全」と主張する。財務省の考え方には、以下の2つの問題点があるようだ。
 1. 財政を借金と資産のバランス(差額)で見てない
 2. 統合政府(政府+日銀)の考え方が欠如している

 上表は6/29のブログで使った日本政府の貸借対照表である。この表を使って説明すれば、問題点1は「財務省は、国の借金(1411兆円)ばかり主張して、国の資産(表の左側 723.9兆円)について触れてないこと」、問題点2は「この表には日銀の資産が入ってないこと」を意味する。上記貸借対照表に、統合政府の一員である日銀の資産の一つである「国債買取残高(582兆円(2022年度末))を加味すれば、日本統合政府の純負債(資産から負債を差し引いた差額)は100兆円程度(687兆円-582兆円)となり、GDP比率で20%を割り込む値となる(主要先進7ヶ国の中で最低水準となる)。これは、日本が健全な財政状況であることを示している。
 次に予算の観点から、国の借金がどの程度 国の行政運営の足かせになっているか見てみる。

 上図は、今年度の国の一般会計予算であり、国債(公債)の費目を赤字で示してある。歳入全体に占める公債費の割合は31.1%と確かに高率となっており、財務省が言う通り、借金して借金を返している様子も見て取れる。ここで、歳出の方を見ると、「債務償還費」という費目があって、令和5年度予算では16兆7561億円もあり14.6%ものウエイトを占める。この費目は、国債の元本完全償還のための費用と位置付けられていて、「60年ルール」という規則に従い、現在の国債発行残高を60年で完済するための費用として「減債基金」と呼ばれる別会計に組み入れられ処理される。高橋洋一氏によれば、国際標準では、この債務償還費を予算計上している国は無く、米国、英国、フランス、ドイツなどの主要国は、利払費のみを計上して、国債の償還期限が来れば、借換債を発行して、それで済ませているとのことである。つまり、現時点で日本の一般会計予算には、国際標準に照らして計上する必要のない、金額にして16兆7561億円もの予備費的隠し金が計上されていることになる。こんなに沢山の融通できるお金があるなら、「防衛力強化」も「異次元の少子化対策」も増税無しでできるのである。
 財務省が言う「国の借金1411兆円」も「一般会計予算の3割以上が借金で賄われている」も事実である。しかしながら、日本の財政事情は健全であり、「防衛力強化」も「異次元の少子化対策」も増税無しで進めることができる。景気が上向き、今年度以降の税収も毎年上振れするようになれば、なおのこと「増税」という言葉自体が次第に使われなくなる世の中になっていくだろう。そして、毎年毎年経済が大きくなり、賃金が上がって税収が増える普通の先進国になっていくのである。