タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

経済学に振り回され

 岸田首相は「増税メガネ」というあだ名を気にしているようである。防衛力強化を言い出したところまでは良かったのだが、財源として増税を匂わし、このあだ名の雰囲気を作り上げてしまった。増税財務省の考えにどっぷり浸かっている岸田首相の本音だから、このあだ名は真の姿を言い得て妙とも言えるのだが、こう言われて憤慨しているようでもあり、ひょっとして「増税して財政を健全化し、将来を担う子供たちに借金を残さないことが重要」と本当に考えているのかも知れない。
 経済アナリストの森永卓郎さんが書いた本に「ザイム真理教」がある。財政規律一辺倒で増税しか考えない財務省の姿勢を、オカルト集団の宗教になぞらえて糾弾している。今の日本には、このザイム真理教の教えに毒されている信者が多数いて始末に負えないらしい。とにかく、その教えというものが、いかにももっともらしく、真面目で勤勉な日本人の心に良く響くみたいである。ザイム真理教は、以下のように唱えて日本人を不安に落とし込む。
「現在の国債発行残高は1400兆円もあって、これは日本人一人当たり1000万円以上の借金であり、GDPの2倍以上もある」とか、「国の予算の歳入の31%が国債で賄われている。家計に喩えれば借金で生活しているようなものだ」とか、「このまま歳出を野放図に増やせば、未来の子供たちに借金を負わせることになり、やがては財政破綻する」とか。これは、不安を駆り立ててお金を巻き上げる悪徳宗教の手口と良く似ている。そしてザイム真理教の信者は、文句も言えずに税金を納めることになる。

 上図は経済学の3派を比較したものである。日本では90年代初頭にバブルがはじけ、それからデフレ経済が続き、失われた20年が過ぎていった。2013年からはアベノミクスが始まり、異次元の金融緩和の中 景気が上向き、失業率が下がって雇用情勢が改善したが、デフレからは脱却できないまま更なる10年が過ぎた。この間、デフレから脱却しかかる度に2度の消費税増税が足を引っ張った。アベノミクスは、日銀による金融政策で半分は成功したが、財務省による増税で残りの半分は失敗したことになる。経済運営は、金融政策と財政政策の2つを上手く連携させながら舵取りをする。現時点において、まだ日銀の金融緩和が続いているのだから、このデフレ完全脱却を模索する大事な時期に、ザイム真理教のお経を唱えることだけは止めて欲しいと願うばかりである。
 それにしても経済学は難しい。真理は一つではないのか? どちらの学派の言っていることが正しいのか?