タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

GDP速報値から見えてきた懸念事項

 昨日内閣府から、2023年4-6月期のGDP速報が発表された。

 上図は、実質GDP成長率の推移を示しているが、今回の速報値は、年率換算で6.0%とかなり高い数値となった。これだけ見ると大変結構なことだが、中身を調べるとそれほど手放しで喜べない懸念材料が見えてくる。

 上図は、実質GDPの内外需要別寄与度を示すが、今回の高成長は専ら外需依存であり、内需は逆にマイナス成長だったことを示している。特に、GDPで一番大きなウエイトを占める個人消費が 2.1%のマイナス成長となっており、この個人消費が回復しない限り本格的な景気回復には結びつかない。今後金利が上がれば、民間住宅(7.7%)もマイナスに転じるであろうし、為替が円高へと基調が変われば、好調だった輸出にも陰りが出て来るだろう。手放しで喜ぶどころか、懸念材料満載の速報となっている。
 「個人消費が伸びないのは実質賃金がマイナスになっているからだ」と言われているが本当だろうか? 今年の春闘賃上げ率が3.6%と30年ぶりの高水準となったとの報道があったのだが、実質賃金が未だにマイナスなのはなぜか? 不思議に思い、厚生労働省が出す「毎月勤労統計調査」を調べてみた。

 上表は、6月速報での「月間現金給与額」である。この月はボーナス月であり、「特別に支払われた給与」が存在するため、左から2列目の「きまって支給する給与」欄を見ると、業種別の月給額とその賃上げ率が分かる。これを見ると賃上げ率は業種によってばらばらであり、全業種の平均賃上げ率が 1.5%だと分かる。確かにこれじゃ、物価上昇に満たないので、消費者行動も緊縮のままとなるのであろう。
 上表には、低賃金業種が赤字でハイライトしてある。最初にこの業種の月給額を見たとき、「なんでこんなに低いの?」と思ったのだが、この表の一番下の方へスクロールした時、そこにパートタイム労働者の業種別給与表があったので合点がいった。これらの業種ではパートタイマー比率が大きいため、それらを含めて平均した給与額は当然低い値になるのであろう。
 今年の最低賃金(時間給)のアップ率は平均 4.4%となっており、これが10月から適用されるので、下半期になれば、賃上げ率ももう少し上がって来るであろう。

P.S.
 「実質賃金」という言葉を良く聞くが、こんな8時間労働者とパートタイマーを合わせて平均値として算出された値だと初めて知った。今後60歳の定年を経て、その後再雇用にてパートタイマーとして働く人は益々増えていく。働きたい人に働く場があるのは良いことだが、そんな人たちの給与を全部合わせての「実質賃金」をもって上がってないと言うのは、問題点を見誤る可能性がある。見出し言葉で内容を理解したように思うことは危険だと思った次第である。