タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

失われた30年が終わる年になるか

 昨日経団連が2023年の春闘の指針となる報告書を発表し、物価高を受け、企業に積極的な賃上げを呼びかけた。日銀は、今年度の生鮮食品を除いた消費者物価指数の見通しを、政策委員の中央値で前の年度と比べてプラス3.0%と、これまでのプラス2.9%から引き上げた。また労働団体の連合は、3─5%の賃金の底上げに向けた要求水準を示している。経団連が賃上げの指針を出したことは評価できるとして、消費者物価が3%上がっている中での連合の賃上げ要求が3-5%というのは、いかにも上げ幅が小さいと言いたい。ただ、こんな要求しか出せない裏には、日本の産業が、景気の良いところと悪いところとに分断が広がっている実態がある。ざっくり言えば、円安メリットをフルに享受できている企業とそれ以外である。

 上図は為替レートの推移にマック指数を追記したグラフである。円・ドル為替レートは2011~2012年を円高のピークとして、その後のアベノミックスで一挙に円安へと振れ、2022年には日米の金利差が開いたため、130円/ドルを超える水準になってしまった。ほとんどの輸出企業の事業計画は、多分レート110円台で組まれていると思われるが、それが20円も円安に振れると利益幅が大きく拡大する。こんな輸出企業にとって、賃上げ5%は何等問題にはならない。と言うか、貯まる一方の内部留保を労働者の方へ吐き出し、利益の労働者への分配率をもっと上げなければならない。
 ところが、円安デメリットをもろに被る企業の経営者は「3%の賃上げなんてとんでもない」と言うだろう。どうすれば良いか? 信号が青の企業も黄色の企業も、皆一緒になって渡れば良いのである。
 上図グラフに追記してあるマック指数は、マックを米国で買うのに比べ日本では何%引きで買えるかを示す指標である。2011年当時、マック指数=0%であり、米国のマックは日本でも同じ値段で買えた。ところが2022年には、マック指数=-40%になってしまった。米国から日本へ来た旅行者が、両替した円でマックを購入すると4割引きに感じることになる。
 このようにして、日本の物価が海外から見てめちゃくちゃ安いので、ウイズコロナへ移行した今年は、インバウンド需要が急拡大することは間違いない。そこに、信号青と黄色の企業の5%程度の賃上げが加われば、人手不足が一挙に加速し、賃上げできなかった企業は、商品やサービス料金を値上げして給料アップせざるを得なくなる。そして、赤信号だからと言って何もせず、待つばかりだった会社が淘汰されていくのである。ざっくりと経済原則に沿って言えば、儲かっていない企業から儲かっている企業へ人材が流れ、国民全体の平均給与額が上がりGDPは増大することになる。
 今年は、失われた30年が終わる転換点になると思われるが、こんな大事な年に「増税」を口にする経済音痴の岸田首相は困った存在である。550兆円のGDPが2%の経済成長で11兆円も増えるのであって、数兆円の歳出増なんか小さいものである。もちろん、これは確かに税収11兆円増を意味しないが、日銀が日本の通貨供給量を11兆円分増やして経済を回さなければいけないことを意味する。日本以外の国は、皆お札を沢山刷って経済規模が大きくなったのである。やるべきことは増税ではない。経済規模を大きくすることである。