タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

中国経済お先真っ暗

 最近、中国経済に元気がない。今日は、それがどの程度深刻か調べてみた。

 上図は中国の消費者物価指数の推移を示しているが、6月の物価指数が0%まで落ち込んだ。ニュースでは閑散としたショッピングモール街の映像が映し出され、ゼロコロナ終了宣言を出した後も客足が全く戻ってないことが伺える。中国政府はコロナ期間中、民間企業の救済措置を全く取らなかったため、体力のない中小企業が大量に倒産した。このため、働き場を失った若者の失業率は20%を超えるまでになってきた。

 この失業率には、地方から都市への出稼ぎ労働者がカウントされてないため、この出稼ぎ労働者を含めた全ての若者の失業率は、これ以上に高くなっているものと思われる。そしてこの失業率の高さが若者の消費行動に変化を与え、消費の低迷を生み出した。
 さて、そうは言っても中国のGDPは今年も4~5%の成長を見込んでいる。日本のGDP成長率より余程高い。成長している経済に何故活気が感じられないのだろうか? 中国のGDP構成は異常で、不動産が3割も占めると言われている。そこで、中国の不動産大手の恒大集団を調べたら大変な状況が見えてきた。

 上表は先月公表された恒大集団の決算の一部で、3年分のバランスシートを横にらみしたものである。恒大集団は2020年、2021年と決算発表をしていなかったが、今年になって3年分をまとめて発表し、この会社の危機的な経営状況が一気に明るみに出た。一言で言えば「債務超過」で「倒産していてもおかしくないレベル」である。

 上表は損益計算書を示すが、粗利の0.5兆円でもって金融費用(銀行への利息)も払えない状況が見えてくる。どうも不動産バブルがはじけたみたいである。これらの決算書から見えて来る状況は、「需要もないのにマンションを作り続けて来た」、「マンションが投機対象となり一旦は高額となったものが値崩れを起こし始めた」、「企業の財務状況は既に債務超過」、「経営は赤字経営」になっている。
 不動産会社最大手の恒大集団がこの状況で、しかも金額規模も異常に大きい(債務超過11兆円)。これはゆゆしき状況である。仕入れ債務が19兆円もあるということは、工事をしたのにその代金を払ってもらえてない業者が沢山いることを意味し、恒大がもし潰れたら連鎖倒産がどこまで広がるか分からない。棚卸資産が24兆円もあるが、この先これらの資産をたたき売りすると、評価損でこの先財務状況は一層悪化する。最大手がこの状況だから、他は推して知るべしである。GDPの3割も占める不動産業界がこの状況で、今後数年は生産抑制になるから、建設業界も資材(セメント、鉄筋鉄骨等)業界も、その他関連業界も、ここ当分マイナス成長が見込まれる。まさに日本の土地バブルがはじけた時とそっくりであり、中国でこれから「失われた20年」が始まるようなことを予感させ空恐ろしい。

P.S.
 以下、問題点を箇条書き
・契約負債が14兆円もある。そもそも中国では、マンションは完成する前から売り出し、売買契約が成立した際「前受け金」を支払う。この総額が14兆円もあるとなると、物件完成前にこの会社が潰れた場合、債権者が騒ぎ出し大変なことになる。
・中国においては土地は国有財産で売買できない。売買できるのは土地の使用権のみであり、実体のない商品である。金融派生商品デリバティブと呼ぶが、土地の使用権は土地のデリバティブのような存在になる。デリバティブ商品は実体から離れた存在であるため実際の商品価値が想像し難く、投機対象になり易い。こういう意味では、現在の中国の不動産バブルは、1990年代の日本の土地バブル以上に実体価値から外れ膨らんでしまっている可能性がある。
GDPの3割を占める不動産がマイナス成長が確実となっている中、GDPの成長率が4、5%も見込めるはずはない。これでももし、2023年の公式発表が4~5%の成長となった場合は、これは、中国国家統計局がデータ改ざんしていることを意味する。
・中国は1990年代の日本と同じように、最初に株式のバブルがはじけ、今まさに不動産のバブルがはじけようとしている。注意すべきは、中国バブルの方が日本のバブルより規模がはるかに大きい点である。

P.S.
 中国国家統計局は、本日9日、7月の消費者物価指数(CPI)が 0.3%のマイナスに転じたと発表した。とうとうデフレ不況に突入し中国の「失われたXX年」が始まった。同時に発表された工業品卸売物価指数(PPI)もマイナス 4.4%であり、症状は極めてゆゆしき状況だと言える。