タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

設計不具合と製造不具合

 小林製薬の紅麴健康食品問題で、「機能性表示食品」の問題が指摘されている。比較対象となるのが「トクホ:特定保健食品」である。特定保健食品の方は、実際の製品を使った臨床試験が必要なため、申請して許可を得るまで数年かかると言われいる。一方で機能性表示食品の方は、臨床試験の必要がなく、「安全性」や「機能性」の根拠に関する情報などを国に届け出るだけで良いので、手続きは数ヶ月で済むと言われている。それでは、今回もし、小林製薬の紅麴健康食品でトクホの認定に必要な臨床試験をやっていたら死亡事故は防げていたであろうか? 答えは「NO」である。何故なら、紅麹自身に問題が無いので、紅麹の有効性や安全性を確認する臨床試験をいくらやっても今回の問題が浮かび上がらないからである。
 私は昔機械メーカに勤めていて、自社製品の不具合を何度か経験した。製品の不具合は、設計不具合と製造不具合に分類できる。薬に例えるなら、設計不具合とは、薬の成分やその比率、服用指針に問題があって起きる不具合であり、これは臨床試験で問題が無いよう潰し込むことができる。しかしながら今回の問題は、製造工程での異物混入であり、明らかに製造不具合である。製造不具合は臨床試験では潰し込みができないのである。
 死者が出ている話だから何等かの対策が必要となるが、「機能性表示食品の制度設計が悪い」と評論家気取りの抽象論を唱えても事は解決しない。製造、輸送、保管工程を含めて、製品(食品)の安全性を担保できるよう、制度の見直しが必要となるだろう。食品群を分類して、物によっては「製造工程認証」が必要になるかもしれない。また、不具合が生じた時の報告義務に関しても、きちんと規定することになるであろう。