タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

デジタル化は時代の流れ

 地方紙の見出しに「マイナカード返納急増」を見つけ、『なぜ?』と思ってしまった。確かに最近、マイナンバーカードを巡るトラブルが多数報告されているが、申請に手間暇かけてせっかく取得できたものを、なぜわざわざ返納手続きをしてまで返すのだろうか? 基本的に個人情報はマイナンバーカードではなくマイナンバーに紐づいているのだから、「情報漏洩が心配」との理由でカードを返しても、自身の目的は達成されないまま未達課題として残るだけである。
 今回様々なトラブルが報告されているが、個人情報流出となったのが、コンビニで住民票出力サービスを使った時、他人の住民票が出力されてしまった不具合であり、このサービスシステムを作った富士通Japanがシステム改修を行った(改修後別の自治体のシステムで同様の不具合が再発し、富士通の信頼は失墜してしまった)。システムが原因の不具合は、これ以外に、他システムとの連携不具合(結婚して姓が変わった際の連携ミス)があるが、今回報道されている大きな不具合は以下の3つで、いずれもシステム不具合ではない。
 ① 保険証紐付けミス 7312件 健康保険組合での紐付け作業間違い
 ② 他人の銀行口座紐付け 121件 Logoutされてない他人の画面で登録処理
 ③ 家族の銀行口座紐付け 13万件 
   銀行口座を持たない乳幼児のマイナンバーに家族の口座を紐付けた
   (これができてしまうのはシステム仕様であり不具合ではない)
 さて、デジタル化は時代の流れであり、これを推進することは方向性としては正しい。そして、新しいことをやろうとすれば必ずミスが生まれる。日本人の欠点は完璧性を求めるところにあると私は思っている。今までのやり方を変えるため、新しい仕組みを作り大規模にデータ登録するのだから、そりゃ色々想定外がありトラブルも起きるはず。ただ、そのトラブルが乗り越えられるくらいの小さなものであるなら、改善して前へ進めるだけではなかろうか? ①のトラブルにしても、1万回に1回 人為的なミスがあったと捉え、そのミスをゼロにする改善策を考え実行して行けば良いだけ と私は考える。
 私が40代の頃、社内に3次元CADシステムを導入する仕事をしていたが、この新しいシステムの不具合の多さに辟易したことがある。そんな不満を、開発元の米国社から来たエンジニアにぶちまけたところ「こんな大規模システムでこの程度の不具合は発生するものです」と言われびっくりした。米国では欠点をあまり問題にせず、長所をアピールして生かそうとする。一方で日本では完璧性を求め、欠点潰しに力を割き過ぎて時代の変化について行けなくなる。時代の変化が緩い時は日本流でも良いが、変化が急な時は米国流でやるしかないと思う次第である。

P.S.
 今回、医療機関受診情報をマイナンバーに紐付けするだけなら、マイナンバーカードは要らない。そもそも今回の活動は、コロナパンデミックが起きた時、「日本には個人の既往症の情報を統合的に管理できる仕組みがない」という課題認識が発端になった。ところが今、その国民の生命を守るという危機管理を目的としていた活動が、いつの間にか、「マイナ保険証は便利」という些末な目的にすり替えられて推進されている。確かに崇高な目的だけでは国民を納得させられないのかも知れないが、敢えてカードという物理媒体に拘る理由は何であろうか? 今の健康保険証をそのまま使っても、マイナンバーと保険証IDとの紐付けさえできていれば、当初目的は達成されるのであるから。
 今の健康保険証の欠点で思い当たるところが一つある。顔写真が添えてないので本人確認ができない。であるから、他人の保険証を不正に使用することが割と簡単にできてしまう。政府のお役人は、こんな問題点を今回解消しようと、マイナンバーカード保険証を推進しているのかも知れない。