タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

科学的根拠とは?

 福島原発処理水の海洋放出について、公明党の山口代表が福島市で「科学的根拠に基づき、客観的に安全かどうかを確かめられることが大事だ」、「直近に迫った海水浴シーズンは避けた方がよい。(海水浴)シーズンにわざわざ排出する理由も特にない」と発言した。全く困った発言である。こういう発言自身が風評被害を助長することになるのだが、この人は福島の公明党支持者に、海洋放出に否定的な党の立場を解ってもらえればそれで良いと思っているので、自分の発言で風評被害が拡大しようが関係ないのである。
 科学的な根拠で具体的に安全性が確認されていないかのように発言されているが、今回福島処理水は希釈して、WHOの飲料水基準( =1万ベクレル/リットル) の1/7、日本のトリチウムの規制基準(=6万ベクレル/リットル)の1/40の濃度で放水される。これは、国際基準に照らしても日本の基準に照らしても問題無い科学的な根拠を具体的に示している。
 この海洋放出に強く反対していた韓国が5月に日本へ調査団を派遣した。調査団は調査結果について会見を開いたが、「福島処理水海洋放出の安全性についてはIAEA国際原子力機関)の安全基準に委ねる」と国際機関に責任を押し付け、自ら判断しない立場を取ることで、韓国反対団体からの不満の火の粉が降りかからないようにした。ただ、会見の中で、「福島原発事故では、(今回放出する)水よりもっとひどいものが出てきた」。「10年以上経ったが、韓国の海岸や水産物などどこを見ても問題がない」とも発言し、暗にこの程度の濃度の処理水放出に問題がないことを匂わした。
 さて、科学的根拠とは一体何であろうか。この分野の科学を理解できる人は極めて少数派になるので、一般国民はその道の専門家が「安全だ」と言ってくれたら その考えに従うことになる。ところが、こと「原子力」が絡むと、専門家の言うことは信用できないという空気が生まれ、メディアもその雰囲気を煽るから、これがまた風評被害の種となり事がなかなか進まないことになる。

 上図は、この処理水の中の放射性物質となるトリチウムが環境内でどんなレベルで存在するかを示している。フランスやイギリスの再処理施設から排出される水より、福島処理水の放射能レベルが低い。これも一つの科学的根拠となるのだが、科学が分からず、どの人の言っていることを信じるか信じないかにより物事を判断している人にとっては、フェイク情報にしか見えて来ない。なんともはや難儀なことである。

P.S.
 7月4日、国際原子力機関IAEA)は、東京電力福島第1原子力発電所の処理水を海洋に放出する日本の計画について「IAEAの安全基準に合致している」とする安全審査の結果を公表した。来日中のグロッシ事務局長は同日に首相官邸で岸田首相と会い、審査結果をまとめた最終報告書を提出した。
 これでようやく処理水海洋放出にお墨付きが得られた。韓国も文句の付けようが無くなった。もちろん、これに反対する団体は科学的根拠に関係なく反対の立場を続けるだろう。しかし、バカの壁で真実が見えなくなった人たちに何を言っても無駄であるから、やるべきことを計画通りに始め 粛々とやっていくしかない。開始時期は公明党代表の顔を立てて、9月にずれ込む可能性があるが、まあしょうがない。