タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

投資は成長のメインエンジン

 昨年11月のブログでは、日本の経済が長期(30年)にわたり停滞した理由を以下の2点と結論付けた。
 1.金融緩和が不十分だった(アベノミクス開始までの期間)
 2.政府支出が不十分だった(バブル崩壊以降一貫して)
 本日のテーマは「投資」であるが、今日はこの投資を政府による公共投資と企業による民間設備投資に分けて再考した。
1.公共投資

 上図は各国の公共投資の推移を表す。1995年を1とした時、日本だけが1を割り込んだまま低空飛行の状態であることが分かる。日本のGDPや日本人の賃金が30年も上がらなかったのは、この公共投資が、増えないどころか縮小していることが大きな要因であると考えられる。思い起こせば民主党政権の頃、「コンクリートから人へ」とのスローガンで公共事業が否定されてしまった。その後「国土強靭化計画」の名の下、防災インフラや交通・通信・エネルギーといったライフライン・インフラの強靭化を唱えるに至ったが、いくら唱えても財務省が予算を付けてくれないので、計画は遅々として進まない。北陸新幹線も金沢から敦賀までの延伸に9年も掛かった。敦賀から先 大阪までの全線開通がいつになるかは検討も付かない。

 上図は日仏独の高速鉄道網の比較である。新幹線は日本発祥で60年も前に営業運転が開始され、この時点で日本は世界のトップを走っていたが、今や営業運転総延長において、フランスやドイツにも抜かれてしまった(中国とは比べようもない差がついた)。欧米各国はインフラ投資を継続的に、しかも金額レベルを落とさずにやっており、この投資額の大きいことがGDP成長に効いていると思われる。
2.民間設備投資

 上図は民間設備投資額の推移を表す。投資額は1991年度にピークとなり、その後バブルが弾けるのと連動して2008年度にはピーク値の半分までに落ち込んた。その後、アベノミクス開始(2012年度)以降は上昇基調となったが、新型コロナ時の落ち込みもあり、未だにピーク値まで回復していない。
 さて、このグラフの形は日経平均株価のグラフの形と良く似ている。今年は更に投資額が増えると予想されるから、株価もその辺りを期待して上がっているとも言える。

 上表は、ここ最近の半導体の投資先と投資金額を表すが、現在日本のあちこちで半導体関連の工場建設が進んでいることが分かる。注目すべきは、投資額が大きい点と政府の助成が付いてる点である。先日のブログで、TSMC熊本工場の経済効果が10年で20兆円と紹介したが、今後日本の各地で莫大な経済効果が生まれると期待され、改めて「投資は成長のエンジン」であるとの思いを強くする。
 経済が成長してGDPが増え、我々の賃金が上がるためには投資が必要である。よく、日本人の賃金が低いのは労働生産性が低いからだ と言われるが、労働生産性を上げるためには、増産や機械化、自動化、省力化等の設備投資が必要になる。経営者はデフレの間はそんな投資を行わない。投資に見合う売り上げ増が見込めないからである。そういう意味では、デフレ経済からインフレ経済に移行した今年は、様々な分野で民間設備投資が復活するであろう。
 一方で公共投資の復活は望み薄である。もう既に、令和6年度予算が超緊縮になっている点は紹介したが、強靭化する前に被災した能登半島のインフラを早期に復興する予算の裏付けもない(各費目を見積もり予算策定しようともしていない)。半導体に対する助成は別格であった。この助成は、安倍政権、菅政権の時に、経済安全保障の観点から米国と取り決めた約束に沿ってやっているから、経済産業省が申請した予算を財務省は否定することができなかった。財務省は「利益を出しているソニーには助成は必要ない」と辛うじて異を唱えることぐらいしかできなかった。ソニーに対する助成額が桁違いに小さいのは、そんな意地悪財務省の 害にしかならない意地の現れなのである。

P.S.
・株式や投資信託の購入も投資と呼んでいるが、今回述べた投資にこれらは含まれない。以下にInvestmentに対する英英辞典の訳を示すが、成長のエンジンとなるのは、「the use of money to make a business activity successful」の方である。
Investment : the use of money to get a profit or to make a business activity successful

財務省の仕事は、事業の有効性を正しく査定し必要となる予算を付与することである。決して予算額を削減することではない。