タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

株高と新NISA

 昨日、日経平均株価がバブル期の最高値を更新し、終値で3万9千円台に乗せた。ニュース映像には証券取引所の明るい雰囲気が映し出され、投資家の強気のコメントも流れた。一方で、株や証券に関係ない一般庶民の間には、実質賃金が長期間マイナスのままという暗い雰囲気が漂い続けている。
 この差はどこから来るのであろうか? まず、「日経平均株価」とは何かを正しく理解しないといけない。日経平均株価とは、プライム市場(昔 "一部上場企業" と言っていたところの「一部市場」)の中の優良225銘柄の平均株価である。日本の優良企業はトヨタをはじめとして今期史上最高益を出しているところも多く、業績は概して好調である。従って、日経平均株価が好調なのは日本の優良企業の業績が好調であることを意味している。そして、その一方で庶民の暮らしが苦しいのは、優良企業が儲かっているのに対し、儲かっていない中小企業が沢山あるからである。昨年の賃上げ率が大手では4%を超えたにも関わらず、中小では3%を割り(2.9%)、結果全体の賃上げ率が物価上昇率を下回ってしまったからである。
 さて、そんな景気が良いのか悪いのか分からない中で、私は つみたてNISAを始めた。このスタート時期に、ネット上で「新NISAは絶対やってはいけない」という記事を目にしたので、今日はその識者の言い分を吟味したい。
1.記事:エコノミストOnline 識者:経済アナリスト 森永卓郎
 森永氏は「少なくとも今、新NISAは絶対にやってはいけない。現在の株価はとてつもないバブルの状態だ。ギャンブルとしてやるなら別だが、老後資金や生活費に回すお金でやってはいけない。」と言っている。
私見
 現在の株価がバブルというのは見当違い。PER(PER=株価÷1株当たり当期純利益)という指標があるが、1989年のバブル期にはこのPERが60~70まで跳ね上がった。これは、企業が左程利益を出せない中で株価だけが猛烈に上がったことを意味するので、この時期は確かにバブルであったと言える。現在の日本株の平均PERは16程度であり正常な値である。現在株価が上がっているのは、当期の利益見通しが上がっていることと、日本株の割安感に気付いた海外投資家からの資金流入があったからであり、バブルで株高になっているわけではない。
2.無責任な数字で煽る金融庁は“罪”だ(経済評論家 荻原博子氏)
新NISAは今からでも始めるべきか?の問いに対して、荻原氏は「いえ、やめるべきです。たしかに、新NISAは株価が上がったときは非課税の恩恵を受けられます。しかし、今は株価が右肩上がりでも、この先、確実に株価が上がっていく保証はまったくありません。それなのに、下がったときはなんの手当てもないのです」
私見
 荻原氏は、まず、投資のリスクを隠したままNISAを勧める金融庁を批判している。また彼女は、投資で損失が出た場合に、NISAには、「損益通算」や「繰越控除」ができないデメリットがあると言いたいみたいである。「損益通算」や「繰越控除」については、私も今年の確定申告の際学んだばかりであるが、今まで株や投資をやったことがない人にこんな言葉を使って説明してもチンプンカンプンであろう。肝心なことは、「投資にはリスクが付きものであり、それをわきまえて自己責任でしなければいけない」という点である。そして、リターンは少なくても良いからリスクを最小にするローリスク・ローリターンの戦略でいくなら、少額でコツコツと長期間投資する「つみたてNISA」が適していると言える。また、つみたてNISAでは投資対象が金融庁が定めたインデックス商品(日経平均とかTOPIXのような株式市況の指標(INDEX)となるような商品)となるので、これは分散投資を意味し危険分散につながるので、投資の初心者にとっては良い選択肢となる。そしてこれは、荻原氏が言う「損失が出た際の救済措置」にはならないが、損失が出ないようにする方策には成り得る。日本株価は、短期で見れば浮き沈みはあるが、長期で見れば必ず上がるのである。