タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

宇宙人はどの程度いそうか?

 今日は、宇宙人(地球外知的生命)がどの程度いそうかを考えてみた。

 上図は、宇宙の歴史に対し生命進化の歴史を加味したものである。今までは、地球のような惑星を伴う恒星系はどこにでも存在するとぼんやり考えていたが、これを宇宙の歴史の中で考えた場合、地球のような岩石惑星を伴う恒星が生まれ始めたのは、宇宙が誕生してから少なくとも数十億年後のことだったに違いないと思った。何故なら、宇宙が生まれたばかりの頃は、物質は水素とヘリウムと極少量のリチウムの3種類しかなく、地球型惑星(岩石惑星)の原料となるSi(ケイ素)もAl(アルミ)も無かったからである。もちろん、生命の素材となる炭素も窒素も酸素も無かったわけで、これらの元素が生まれるのは、輝き続けた星が一生を終える時となる。
 恒星は最初水素の核融合反応で輝き始めるが、水素が少なくなるにつれて今度はヘリウムの核融合が始まり、その反応の生成物として炭素や酸素や窒素が生成される。質量が太陽の何十倍も大きな恒星になると、核融合反応は更に進み、Al、Si、P、Ca、K、Mn、Fe 等を生成し、最後は超新星爆発を引き起こして星の一生を終える。つまり、地球型の岩石惑星が誕生し始めるのは、超新星爆発が何十回も何百回も起こり、宇宙空間にその生成物がばらまかれ、それが一定程度の濃度に達して以降のこととなる。上図では、およそ80億年前以降とした。ただ、初期の頃は、まだ岩石元素の濃度が薄いため、恒星の近くに水星程度の小さな岩石惑星ができる程度で、生命が誕生できるような海(液体の水)を保持した惑星ができ始めるのは、もっとあとの時代になってからだったかもしれない。すなわち、太陽系が誕生した今から46億年前頃は、生命誕生のためのゆりかごの誕生時期と捉えた場合、意外と早い時期となり、ひょっとして地球上の生命は、宇宙内の生命進化のトップを走っている可能性だってある。
 次に、生命進化の歴史を考える。地球の太古の海に最初に生命が誕生したのは、今から38~40億年前と考えられており、それから20億年を経てDNAを核膜で覆った真核生物へと進化し、さらに10億年を経て多細胞生物へと進化した。脊椎動物の祖先(ピカイア)へと進化したのが今から5億年ほど前であり、700万年前には人類の祖先(サヘラントロプス・チャデンシス)へと進化し、現代人へと繋がっている。つまり、地球の場合、知的生命へと進化するのに、惑星誕生から46億年、生命誕生から40億年ほど掛かることになる。
 上図の右端には未来の事象が書いてあり、地球上の生命はあと10億年程度で絶滅すると考えられている。10億年後にはプレートテクトニクスが停止し、磁場バリアが消滅するので、太陽風に晒されてしまい、地表に生息する大型多細胞生物は絶滅すると考えられている。
 これらを考えあわせて、今現在、我々が住むこの天の川銀河に知的生命がどの程度いるかを推定した。

 上は、我々が住む天の川銀河に、現在どれくらいの知的生命がいるかをシミュレーションした結果である。110,600種の知的生命がいる計算となった。以下、パラメータを説明する。
fp:太陽程度の大きさの星は標準的な主系列の星で全体の8割程度(79%)である。太陽より大きい星は寿命が短いので生命の誕生以前に消滅してしまう。また、小さい星は惑星への放射エネルギーが小さいので生命の誕生には時間が掛かり過ぎる。つまり、太陽程度の大きさの星しか生命誕生には向かないことになる。この太陽程度の大きさの星の寿命が100億年程度であり、その寿命の中で誕生後40~50億年の星の割合は1割となる。なお この「誕生後40~50億年」という条件は、知的生命まで進化するのに必要となる期間を意味する。
fe:地球には最初水が無かったが、惑星形成時に木星が形成され、その大惑星の重力の攪乱作用により、氷に覆われた隕石が大量に地球に降り注いだため、地球は水の惑星になったと考えられている。このようにして、太陽から地球までの距離、木星のような大惑星までの距離が太陽系と同じくらいの恒星系になる確率はかなり低いと思われ 0.1とした。
fl:液体の水を有する地球型惑星には、生命の誕生に必要な 炭素、水素、酸素、窒素等の元素は当然存在すると思われる。「はやぶさ」が持ち帰った「りゅうぐう」の砂からはアミノ酸もみつかっており、あとは、これらの生命の素材が溶けた海に恒星からの熱放射や熱水鉱床からの地熱エネルギーが加わって化学進化が進み、タンパク質やRNAやDNAが形成されるまでに至るかである。これがどの程度の確率になるかは、さっぱり分からない(なお、タンパク質、RNA、DNAを基本素材としない生命は私の頭では想像できない)。
 火星には、昔大量の水が存在していたことが確実視されている。ただ、火星の重力は地球の1/3しかなく、誕生後4億年以内に初期水量の50%以上が宇宙空間へ散逸したと考えられている。火星は誕生時地球より早く冷えたので、生命誕生への化学進化が早く始まった可能性がある。しかし、太陽からのエネルギー量は地球が受ける量よりも小さいので化学進化のスピードは地球の場合よりスローペースであったに違いない。火星に原始生命の痕跡が見つかれば、この確率flはもう少し上がる。
fi:たとえ生命が誕生しても、それが高等生物へ進化できるかどうかは分からない。もし、月が無かったら、地球の自転スピードはもっと速いままで、地表では強烈な砂嵐が吹き荒れ、生物の地上への進出がないままだったかもしれない。大気の組成が地球とは異なっていたり、重力が地球の2倍、あるいは半分だったりした場合、そういう地球とは異なる環境でも、知的生命体へ進化できるかどうか全く分からない。
ft:地球上の人類の場合に基づき、知的生命体へ進化したあと、おおよそ10億年程度は、その惑星上で生き永らえる環境が継続すると仮定する。次に、700万年前の人類の祖先(初期猿人)から現代人に至るまでの進化の程度は凄まじく、このあと更に700万年経てば、人類は進化の袋小路に入り込み滅亡すると仮定する。つまり、知的生命として生き永らえる環境的許容時間は10億年あるのに、実際永らえる時間は700万年程度しかないということで、ft=700万年/10億年=0.007 とした。この確率が極めて低い値となるのは、進化のスピードが速ければ絶滅するのも速いということと、その高速進化を極めた上で繁栄している期間は、長い宇宙時間を尺度とした場合ほんの一瞬にしか過ぎないことを意味する。
 さて、この天の川銀河系に、もし知的生命が110,600種もいたとしたなら、その中のお一人でもいいから、御尊顔を拝したいものである。