タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

今年の賃上げ状況

 昨日、厚生労働省から今年の賃金引上げ実態調査が発表された。

 上図は厚生労働省発表資料からの抜粋であり、今年度の平均賃金改定額(9437円)、改定率(3.2%)が示されている。図から分かるように、額も率もここ25年で最高となっている。ただ、これを素直に喜べないのは、今年は物価上昇が激しく、実質賃金の伸びが今年9月まで18か月連続でマイナスとなっていて、家計は苦しい状況が続いているからである。

 上図は企業規模別、産業別の賃金改定状況を表している。従業員5000人以上の大企業では賃上げ率が4.0%となっており、また、宿泊業、飲食サービス業でも賃上げ率が1.7%から4.4%へと大幅にアップしたことが分かる。
 今年は賃金上昇の流れが見えて来たが、それ以上に物価が上がる状態が続いている。景況感が良いのは輸出で稼ぐ大企業とインバウンドで盛り上がる宿泊業、飲食サービス業といったところで、中小企業の中には、まだまだ賃上げもままならぬ苦しい状況のところもある。こんな中、連合は、2024年春闘で賃上げ目標を5%以上にする方針を示した。もし来年の平均賃上げ率が5%以上となれば、来年は物価上昇率が多分2%台まで落ちて来るので、年度後半には実質賃金もプラスに転じることになると思われる。
 ここで問題となるのは、中小の経営者がそんな5%もの賃上げを実施するかである。今は、デフレからインフレに頭を切り換えねばならない時期にある。もうインフレは始まっているし、その変化が学生の就活状況に如実に現れている。コロナ明けの今年は、売り手市場の傾向がより鮮明になった。学生が企業を選ぶ時、初任給の高さが第一条件になるので、優秀な人材を確保したい企業は初任給のアップ(=ベースアップ)に走り始めた。インフレ率以上に賃金を上げないと、事業に必要な人も集まらない時代に突入したのである。この「デフレ時代からインフレ時代へ」という潮流を敏感に感じ取っている経営者であるなら、来年の賃上率をしかるべき高い値とするであろう。感じ取れない経営者の企業は、ジリ貧になり淘汰されていくのである。
 日銀の植田総裁も、来年の賃上げがどの程度に落ち着くかを気にしている。これにより、デフレからの完全脱却を見定め、異次元の金融緩和の終了を正式に宣言するかも知れない。デフレからの完全脱却の予兆が見えて来たが、実際どうなるかは、まだ誰にも分からない。