タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ヒトへの進化(顔はどう変わったか)

 今日は、ブルーバックスの「顔の進化 あなたの顔はどこからきたのか」(馬場悠男著)の紹介記事に書いてあった内容をまとめてみた。

 上図は、類人猿からヒトへの進化系統樹である。ヒトは、類人猿(チンパンジーとの共通の祖先)から分岐し、「初期猿人」→「猿人」→「原人」→「旧人」→「新人」(ヒト:ホモサピエンス)へと進化してきた。下図では、このヒトへの進化に伴い、顔がどのように変化してきたかを代表種族の復元想像図で示している。

 下図は、人間らしさを示す5つの特徴(直立二足歩行の発達、犬歯の退化、手の母指対向把握能力(親指をほかの指と向かい合わせて物を握ること)の発達、咀嚼器官の変化、大脳の拡大)がどう変化したかを示している。

 2023-03-08のブログでも紹介したが、ヒトへの進化の第一歩は「直立二足歩行」だと考えられている。上図でも、今から700万年前の「初期猿人」において、直立二足歩行能力が発達し、犬歯が急速に退化し始めたことが示されている。この進化の推進力となったのが、「多夫多妻制」(チンパンジー)から「一夫一婦制」的な社会生活への移行である。そしてこの変化は雌雄の体格差の縮小を助長し、ヒトへの進化の道をより強固にした。
 チンパンジーでは、オスはメスより身体が大きく、力も非常に強い。争いで勝ったオスがメスを独占する傾向がある。メスにはオスを選択する自由がほとんどない。しかし、同じチンパンジー属のボノボは、チンパンジーに比べると雌雄の体格差が小さく、オス同士の争いも少ない。さらには、もめごとやストレスを争いではなく接触行動で癒したりする。今から700万年ほど前、ボノボより更に雌雄の体格差が小さく、オス同士の争いが少なくなった「初期猿人」が、直立二足歩行を始めながら一夫一婦的社会に移行していった。一旦このような集団が生まれると、メスは食物をくれるオスを頻繁に性的に受け入れ、オスはメスが産み育てる子どもを自分の子どもだと信じることになる。そして、優しくて稼ぎのよいオスがメスに選ばれるようになった。直立二足歩行で自由になった手は、物を持ち運ぶ道具として母指対向把握能力が発達した。「初期猿人」から「猿人」へ移行するにつれて、これらの特徴(直立二足歩行と母指対向把握の発達および犬歯の退化)はより顕著になった。
 手や指を器用に動かせることが進化の推進力になるのと並行して、大脳が、「原人」、「旧人」へと移行する段階で急速に発達し始めた。
 また咀嚼力については、「猿人」として樹上生活を止めた頃、草原の硬い乾燥した食物を噛み砕くために、小臼歯と大臼歯は大きくなり、磨耗を減らすためにエナメル質が厚くなった。その結果、歯列全体が前後に長くなり、口が前方に大きく突出するようになった。しかし、「原人」になる頃には、本格的に石器を使って積極的に狩りもするようになり、こうして柔らかい食物を手に入れられるようになったため、歯と顎の大きさも小さくなった。このようにして、咀嚼器官(歯と顎)は「猿人」で発達し、「原人」へ移行する段階で急激に退化していった。その結果、 顔は、「原人」以降で口の前方への突出が小さくなり、急速に現代の「新人」に近づいていった。

 2001年にサヘラントロプス・チャデンシスが発見され、人類の起源は、400万年前から700万年前へと一挙に300万年も遡った。昔、ヒトへの進化は「脳の拡大」から始まったと言われたこともあったが、今では「直立二足歩行」が先、「脳の拡大」は後 と訂正された。昔、ヨーロッパ人の祖先はネアンデルタール人、アジア人の祖先は北京原人ジャワ原人との説(多地域進化説)もあったが、今では、ネアンデルタール人北京原人ジャワ原人も皆絶滅し、人類の共通祖先はアフリカに存在したとする説(アフリカ単一起源説)に訂正された。このようにして、昔考えられていた様々な説が間違いだと分かり、それに伴い、学校の教科書内容も次々と書き変えられた。

 さて、今日のブログの一番重要な点は、ヒトへの進化の起点になったのが「直立二足歩行」と「一夫一婦制社会への移行」であったという点である。オス同士が争うことを止め、「強者独占」から「平等に分かち合い協力し合う社会」へ移行したことが、ヒトへの進化の原動力となったのである。メスがオスを選択するようになった点も大きい。このような考えに立脚して、現在のハマスイスラエルの争いを見た時、アラブ・イスラム世界の、男尊女卑の傾向が強く、一夫多妻の制度も残り、女性の社会進出が遅れているこの旧態然たる社会こそが、こんな戦争に明け暮れる状態を作り出している一番の要因に見えてきた。こんな男中心の社会を改めなければならない。女性の社会進出(特に政界への進出)を進めなければならない。それには、女子にも男子と同じような教育を受けさせなければならない。そして、一番の肝(きも)は「イスラム教の宗教改革」である。イスラム教にもマルチン・ルターのような改革者が必要だと思った次第である。

P.S.
注1)ヒトへの分岐点については 2023-3-8ブログを参照

注2) ヒトとネアンデルタール人の交雑については2022-10-4ブログを参照