タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ウユニ塩湖の地下に眠るリチウム

 先日、TVの報道番組で、観光地として有名なボリビアのウユニ塩湖で、中国企業がリチウム採掘を始めたと放映された。この番組によれば、このボリビア、チリ、アルゼンチン辺りはリチウム・トライアングルと言われ、世界最大のリチウム埋蔵量が見込まれているらしい。リチウムは今や、スマートフォンや電気自動車のバッテリーに欠かせない希少物質であり、「白いダイヤ」とも呼ばれている。
 今日はリチウムがどのように創られ、そして希少な存在になったかを調べた。

 上図は地殻を構成する元素の構成比率を示す。リチウムは貴金属ほど希少ではないが、PPM単位でしか存在しないレアメタルであることが分かる。

 上図は、周期表に示す各元素が宇宙で起きるどんな事象で生まれたかを示している。これによれば、原子番号の若い順から、水素(原子番号1)、ヘリウム(原子番号2)、リチウム(原子番号3)が、宇宙創成時のビッグバンの中で創られたことが分かった。それで、ビッグバンの初期段階で水素やヘリウム、リチウムといった軽い元素がどのように生成されたかを調べた。

 上は、宇宙が誕生した時、水素やヘリウムがどのように生成されたかを示している。今から138億年前、火の玉宇宙として誕生した小さくて超高温の宇宙は、膨張して温度が10兆度に下がる頃、クォークが合体して陽子や中性子が誕生し、更に膨張して温度が100億度に下がる頃、陽子と中性子が合体して、水素原子核、ヘリウム原子核が作られ、ちょうどこの頃、ごくわずかにリチウムの原子核も作られた。そして、宇宙誕生から37,8万年後に宇宙温度が3000度Kまで下がり、水素、ヘリウム、リチウムの各原子核は電子を捉えてそれぞれの原子核を包むように配置し「原子」が誕生したと考えられている。
 ウユニ塩湖の地下には、138億年前の宇宙誕生時に生まれたリチウムが眠っていることになる。

P.S.
 上述したように、宇宙ができたばかりの頃の構成元素は、水素とヘリウムが3:1の割合で存在し、それ以外には、極々わずかのリチウムが存在するのみであった。この3種以外の元素は、これから数億年後に星が輝き始め、この恒星の中での核融合反応や、質量が大きい巨星が死の間際に起こす超新星爆発の過程で生まれたことになる。

 上図は2つのヘリウムが核融後してベリリウムができ、そのベリリウムとヘリウムが核融合して炭素ができることを示している。恒星の中で核融合が進むと、水素が少なくなりヘリウムが増えて来て、重いヘリウムは恒星の中心部に集まり上図のような核融合反応を始める。そして、ヘリウム(原子番号2)を原料とする核融合反応は、生成物としてはベリリウム原子番号4)や炭素(原子番号6)と偶数番号の元素となり、リチウム(原子番号3)やホウ素(原子番号5)が生成されることは基本的にはない。このようにして、リチウムは希少元素となったのである。