タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

彼岸花の変わった生き方

 今年はずっと暑かったせいか、彼岸花の開花が遅れている。我が家の彼岸花は、今日の秋分の日にやっと一輪咲いた。我が家には彼岸花が咲く領域が2つあり、一つは陽当たりの良い庭石の横、もう一つが陽当たりの悪いブロック塀際であるが、陽当たりの悪い方が咲きそろうのは、多分、来月初になるのではなかろうか。

 それにしても、彼岸花は他の草花に比べると、随分変わった生き方(Life Cicle)をする植物である。彼岸花が特異な点は、
 ① 秋に芽が出る
 ② 花が咲いたあと葉が出る
の2点。今日は、彼岸花がなぜこんなライフサイクルになるように進化したのか考えた。
1.秋に芽が出る
 植物は通常春に芽が出る。春が過ぎて初夏に芽が出るものもあり発芽時期は様々であるが、太陽光が弱くなり気温が下がって来る秋に芽がでるのは彼岸花ぐらいではなかろうか。もちろん、秋野菜は秋に種を撒けば秋に芽がでるのだが、彼岸花は球根で冬を越す多年草の植物である。その彼岸花が、冬が過ぎて春になっても芽を出さず、夏になってもまだ芽を出さず、ずっと土の中で時が来るのを待っているのである。こんな不思議な生き方をして一体何が良いのだろうかと思ってしまう。
 そうは言っても、何かメリットがあったから彼岸花は他の植物との生存競争にも勝ち残り、現在の変わった生き方をする植物として生き残ったのだろう。考えられるメリットは、敵となる他種の植物が少ない点である。秋とは、ほとんどの草花にとって活動を停止していく時期となる。そんな時期に活動をスタートする彼岸花は、太陽光の奪い合いにおいてほとんど敵なしの状態になれる。
2.花が咲いたあと葉が出る
 樹木では、桜のように花が咲いたあと葉が出るものもあるが、彼岸花のような球根で冬を越す多年草の植物で、花が咲いたあと葉が出る植物は珍しい。葉が無い中で花を咲かせるには、球根に蓄えられたエネルギーのみで事を完遂しなければならない。ここに、彼岸花の「今あるエネルギーを全部使っても良いから最初に子孫作りをやってしまう」という戦略が読み取れる。

 さて、秋に咲く花は、通常は日が短くなるのを感知して開花時期をコントロールしている。しかしながら彼岸花は、今日の考察から、土中で花芽(花茎の芽)をわずかに出した状態で、温度が一旦上がったあと ある特定の温度まで下がって来るのを待つことで発芽時期をコントロールしていることになる。改めて「変わったやつだ」と思った次第である。