タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ファクターXとは結局何であったのか?

 今日から、新型コロナ感染症の扱いが5類へ移行した。何かこれと言った総括がないままに、「有事」から「平時」へと看板が書き換えられたような気がする。今日は、3年前に問題提起された「ファクターX」について再度考えてみた。

 上表は、ファクターXとは結局何であったかを整理したものである。私の中では、ファクターXは何であったかの解答は既に出ている。ファクターXとは、第1には、日本人にHLA-A24という特定の白血球抗原型を持つ人の割合が欧米人に比べてかなり高いこと、第2には、東アジア諸国において従来型コロナ感染症が欧米より高い頻度で発生していたこと、そしてこの二つの事情により、日本人の中に新型コロナウイルスに対する免疫を持っていた人の割合が、パンデミックの前から相当高かったからだと言える。
 下図は、ファクターXの正体となる免疫(交差免疫)が働くメカニズムを示している。ポイントとなるのは、HLA-A24上に提示される抗原決定基エピトープ)が、従来型コロナウイルス感染の場合と新型コロナウイルス感染の場合とが同じものであるという点である。キラーT細胞は、この抗原決定基を標的にして感染細胞を攻撃するので、従来型と新型で抗原決定基が同じということは、従来型に感染した時点で新型にも攻撃を与えることができる防御体制(免疫)ができたことになる。

 この事実は、理化学研究所の研究グループが突き止め2021年12月に発表された。ただこの頃は、第6波となるオミクロン株の襲来に日本中が戦々恐々としていたので、この発表は大して大きなニュースにはならなかった。また、一般の人には、「免疫の主役は抗体」と理解されていたので、「今回判明したファクターXの正体は、抗体免疫とは異なる別の細胞免疫の方でした」と説明しても理解されなかったのではなかろうか。

 さて、上表で分かる通り、日本人のある一定数がパンデミック前に免疫を持っていたとしても、その免疫は細胞免疫であって重症化は防ぐが感染を防ぐ免疫ではない。つまり、死者数は少なくなる可能性はあるが、感染者数は欧米諸国と同程度になっても不思議ではなかった。しかしながら、実際感染者数も欧米と比べて圧倒的に少なくなった。なぜだろうか? 私が考えた理由は、『実際の感染者数は検知された数の何倍もいた』である。新型コロナ感染症は、第1波の頃は、「感染してから発症まで1週間」という非常にスローテンポの感染症として始まった(オミクロンへ変異した時点で発症まで2.8日という通常の感染症になったのだが)。既に細胞免疫を持っている人がこの頃新型コロナに感染した場合、きっと発症する前に治ってしまっていたに違いない。もちろん、感染者としてカウントされることはなかったのである。