ワクチンは変異株に対しても有効性90%以上の効き目を保持する

 横浜市立大学の山中竹春教授グループが、ファイザ製ワクチンを接種した日本人の中和抗体保有レベルを調べた結果、このワクチンが変異株に対しても90%以上の有効性を保持することを明らかにした。本研究結果はmedRxiv2に投稿され公開された。
 久々の明るいニュースである。私は、4/23の「インド二重変異株」のブログでは、ワクチンが二重変異株に対して効き目が弱まり、この夏に第5波が来ることを危惧していたが、そんな心配はしなくて良さそうな感じになってきた。
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上は論文内の図の抜粋であるが、左から「ワクチン接種前」、「1回接種後」、「2回接種後」の中和抗体保有レベルの分布(N=105人)を示している。縦軸は中和率を示し、中和抗体でどの程度ウイルスを中和(感染阻止)できるかを0から100%の値で示している。また横軸は、従来株に加えて7種類の変異株を示している。このグラフの中に、未感染の日本人105人を被検者として、ワクチン接種前と接種後の各株に対する中和率をプロットしている。
 このグラフにより、各変異株に対しても、ワクチン2回接種で90%以上の人が十分な抗体レベル(中和率40%以上)に達していることが分かる。
 この論文により、私が抱いていた抗体のイメージが変わった。また、この論文はFactor-Xとは何であるか、交差免疫とはどういうものかを暗示している。
 まず、Factor-Xについてであるが、上図一番左のグラフで、今回の被検者105人が、感染前でかつワクチン接種前であるにも関わらず、新型コロナウイルスに対する中和抗体を保有し、中和率のレベルも0から40%の間でばらついていることが読み取れる。これぞまさしくFactor-Xの正体である。私は4/7のブログで「日本人の3/4が陰のワクチンを接種済み」と書いたが、この論文は、実際105人に行った調査結果として、私が言ったことが正しかったことを示している。しかしながら、この論文が示す調査結果は、今までの抗体保有率調査結果(抗体保有率数%)と全く合わない。この矛盾がどうして起きるのかを理解するには、私が今まで抱いていた抗体の概念を変えなければならなかった。f:id:TatsuyaYokohori:20210514132236p:plain
 上図は私が抱いていた抗原と抗体の関係である。最初は1対1の関係だと思っていたが、一つの抗原に対し抗体は複数存在することを知り、上のようなイメージを抱くようになった。この絵では2種類の中和抗体が描かれているが、このように少数種類しかないと思うようになったのは、トランプ元大統領が2種類のモノクローナル抗体ブレンドして治療したというニュースを聞いたからである。
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 上図は「抗原と抗体の関係」の新しいイメージである。一つの抗原に対し中和抗体が数多くの種類数 存在することが分かった。そしてこれらは、それぞれ守備位置が異なるらしい。抗体は「抗体セット」として、複数種類の抗体のチームプレーで抗原に立ち向かうことになる。野球に例えるなら、ピッチャーがどんなに良くても内野に穴があれば、敵にその穴を突かれることになるから、バランスの良い守備力が必要となって来る。
 このように抗原と抗体の関係を見直すと、色々なことが見えて来る。その一つ目が「何故Factor-Xが東アジアの人々だけに働くのだろうか?」に対する答えである。f:id:TatsuyaYokohori:20210514145626p:plain
 上図のように、新型コロナウイルスが発生する前、東アジアの人々は各自の旧型コロナウイルス用の抗体セットを持っていたと思われる。もちろん、どのバージョンのウイルスにどれ位多く感染したかは人によって異なるので、それに応じた抗体種も異なってくる。よって上図は各自が保有する抗体の和集合的イメージとなる。f:id:TatsuyaYokohori:20210514150237p:plain
 新型コロナウイルス旧型のスパイク形状を大々的に変更する形でこの世に現れた。この新型ウイルスは、元々旧型感染も稀だった欧米人にとっては、過去の獲得免疫が全く効かない新規ウイルスとなったが、旧型ウイルスの感染を頻繁に経験していた東アジアの人々にとっては、上図で示すように、少々の抗体が効力を維持するウイルスとなった。この効き目が維持できた抗体群を「交差免疫」と呼び、これがFactor-Xの正体である。
 次に、抗体保有率調査結果が今までずっと低率であったことを説明する。新型コロナウイルスの抗体測定キットは、新型のみに反応する抗体種をターゲットとしている。旧型と新型双方に反応する抗体種(上図 抗体3)をターゲットにすれば、当然抗体保有率は上がることになるが、抗体保有率は新型に限定して求める必要があるので、そんな抗体種を排除して測定している。
 最後にワクチンが変異株に対しても高い有効性が維持できる理由を説明する。上図で示すように、今まで旧型コロナウイルス感染にて獲得できていた免疫の有効性が、新型コロナウイルスに対しては、有効率40%以下に下がってしまった。この理由は、スパイク蛋白質がモデルチェンジで大幅に変わってしまったからである。一方で最近騒がれている変異株はスパイク形状の数カ所が変わるくらいのマイナーチェンジであり、その変更箇所を守備する1,2種の抗体に影響与えるだけで、他の多くの抗体種は全く影響を受けない。仮に抗体種が全部で10種あり、その内一つの抗体種の効き目が無くなったとして、有効率が100%から90%程度に下がる計算となる。