タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

バイオマスによる繁栄度比較

 我々は、ヒトが地球上で最も繁栄している生物種だと思っている。ただ、繁栄しているとはどんな基準で測れるものだろうか? 確かに現時点でヒトは80億人もいるので個体数は相当多いが、アリは最低でも2京匹いると言われており、個体数で比べれば圧倒的にアリの方が繁栄していると言える。ただ、一人のヒトと一匹のアリを同等に扱うのは適切ではないと思われるので、ヒトの平均体重に80億を掛けた量とアリの平均体重に2京を掛けた量を比べると、どちらが繁栄しているのか分かるのではないかと思ったりもする。
 この、個体平均体重*個体数 で算出できる量(個体重量合算値)をバイオマスと呼び、このバイオマスが各生物種でどのような値になっているかを比較することで、現在地球上で有機物がどのような生物に分配され、どの生物種が栄えているかが見えてくる。

 上図は地球上のバイオマス分布を示す。生物大分類(上図A)では、植物が他を圧倒してトップの座にいて、ヒトが含まれる動物は、細菌や菌類(カビ、キノコ)にも及ばない。バイオマスを基準にすると、地球上で最も繁栄しているのは植物になる。次に、劣等集団である動物の中(上図B)で比較をすると、節足動物と魚類で動物バイオマスの8割以上を占めていることが分かる。ヒトは単一種のバイオマスとしては大きな値を持ち、ヒトが影響を与える家畜と合計すればかなり大きな値となる。ただそれでも、軟体動物(タコ、イカ、貝類)や環形動物(ミミズ、ゴカイ、ヒル)と同程度にしかならない。
 バイオマスの総量は地球上の有機物の総量とほぼイコールの関係にあり、産業革命以降で化石燃料を燃やし始めた結果、この200年ほどでほんの僅かに増加しているかも知れないが、大づかみの理解においては「バイオマス総量は一定」と見て良いだろう。
 バイオマス総量一定の中で、ヒトという生物種は、ここ数万年間の間に個体数を急激に増加させた。ヒトは過去に各大陸にいた大型哺乳類を絶滅させ、その傾向は現在も続いている。野生哺乳類を全部合計しても、ヒトのバイオマスの1/10程度しかない。動物園で見る多くの動物たちが絶滅の危機にあるとなると、野生動物の保護も当たり前のこととして理解できる。ただ一方で、日本においては最近シカが増え森林被害が深刻な状況となってきた。野生のサルやイノシシによる農作物の被害も後を絶たない。このようにして、マクロで見て総論賛成だが、ミクロで見た各論は反対になってしまうことがことがよくある。言うは易く行うは難しである。