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田舎の年金暮らしのたわごと

遺伝子から見た脊椎動物の進化

 今日は、脊椎動物の進化が遺伝子的にはどのように行われたかを考察した。
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 上図の最上段は、コンピュータ解析により同定された脊椎動物の祖先の染色体が10本だったことを示している。この結果は、ゲノムが解読されている、ヒト・マウス・イヌ・ニワトリ・メダカ・トラフグ・ミドリフグ・ホヤ・ウニの全遺伝子配列を比較し、脊椎動物祖先で重複した遺伝子を同定することで求められた。またこの現在種ゲノムから祖先種ゲノムへ遡る解析により、脊椎動物への進化の初期段階で、2回の全ゲノム重複によりゲノム量が約4倍に増えたことが分かった。
 脊椎動物の祖先が誕生したのが約6億年前、2回のゲノム重複が起きたのが5億数千万年前と推定されている。ゲノム拡張を経て脊椎動物祖先種は、脊索を脊椎へ変化させ、顎を有する魚類へと進化した。
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 上図は、脊椎動物の進化が、硬骨魚類、有羊膜類を経てヒトまで、ゲノムをどのように引き継いで行われたかを示している。横軸は染色体番号を示し、縦棒の帯の色は祖先種のどの染色体が引き継がれているかを示す。ゲノム拡張後40本に増えた染色体が、硬骨魚類、有羊膜類を経て次第に融合し、ヒトの23本まで減っている。また、ゲノム量は、減ったもの(祖先種ゲノムが機能しなくなったもの)もあれば、増えたもの(遺伝子重複で独自に増えたもの)もあり、全体量はほぼ変わっていない。

<ゲノム拡張後の進化はどのように行われたか?>
 上記解析結果を踏まえ、ゲノム拡張後の進化がどのように行われたかを考察する。ゲノム拡張で遺伝子数は4倍になったが、拡張して直ぐの段階においては、同じ遺伝子が2つ、あるいは4つある状態であり、多様性の拡大には至っていなかった。ところが、時を経て突然変異が溜まり始めると、元々同じだった遺伝子が異なる遺伝子として「ちょっとだけ異なる蛋白質」を産み出すように進化した。
1.遺伝子のマイナーチェンジによる進化
 例1 脊索から脊椎への進化
 脊索動物においては、脊索形成過程でBrachyury遺伝子(T-box転写因子)が神経管の下部に脊索形成を誘導する。この遺伝子の複製遺伝子が突然変異を経て、脊索の周辺細胞に働きかけて骨化を誘導し、脊椎形成を誘導する遺伝子へと進化した。
 例2 4色型色覚への進化
 脊椎動物の祖先種においては、光受容蛋白質ロドプシン)を産み出す遺伝子を1つしか有していなかったが、ゲノム重複で生まれた複製遺伝子が突然変異で少し変化し、様々な波長の光を受容する蛋白質が産み出され、結果4色型色覚へ進化した。
2.遺伝子の使い回し(異なる用途で使う)
 例1 眼の水晶体蛋白質
 眼の水晶体(レンズ)を形成する蛋白質(クリスタリン)は元々は酵素であり、生化学反応の触媒として使われていた。この蛋白質酵素ばかりでなく構造蛋白質としても使われるようになり、その結果、水晶体を有する眼への進化が可能になった。