タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

なぜ肺や腎臓は左右一対で心臓は一つしかないのか?

  昨日のブログで「昆虫類やタコ・イカ類は心臓を複数持っている」という話をした。幼少の頃、『なぜ心臓は一つしかないのだろう』と思ったことがある。左右2つあれば、一方が動かなくなっても、死に至らずに済むのにと思ったからである。ヒトは左右相称動物であり、外形上は左右対称である。外から見て左右一対の器官も沢山ある。しかしながら、内部の器官では、左右一対でないものもあれば、配置が左右対称でないものもある。今日はその辺りを調べてみた。
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 上表は、各器官が「左右一対」か「体に一つ」かで分類したものである。また縦軸は、各器官が三胚葉(卵割時に現れる3つの胚葉)の中のどの胚葉から分化してできるかを示している。各器官がなぜ左右一対となったか、あるいはならなかったかを考えてみた。
1.目的から考える
 左右一対か否かの理由を、その器官の目的から考えてみた。
1-1 感覚器
 視覚信号や聴覚信号については、左右どの方向からの信号であるかが意味を持つ。従って、眼や耳は左右一対持つように進化した。一方で嗅覚信号は、脊椎動物が両生類へ進化した時点で、地面から発する揮発性物質の情報を意味し、顔の先端を地面に接することにより得られた。このようにして、魚類の時は左右に一対だった嗅覚器が顔の中央でまとまり一つの鼻になった。もちろん、鼻腔や鼻孔としては左右一対であり、それらを取り巻く覆いとしての鼻が一つという意味になる。
 味覚器の舌は、消化器官の先頭に位置する口腔にある器官として、口に入る食物の左右の方向性を吟味することに意味がないため、体に一つの器官になった。
1-2 神経系
 感覚器からの信号で、視覚、聴覚、触覚の信号は左右どちらからの信号であるかが大きな意味を持つ。また、筋肉への信号となる運動神経も左右へそれぞれ異なる信号を送ることは大きな意味を持つ。従って、神経系は基本的には左右一対の器官になった。ただ、脳においては、左右の視覚信号を統合して立体視を得るよう進化したため、左脳と右脳の連携が進み一体化が進んだ。特にレンズを持つ眼に進化した脊椎動物においては、網膜に映る反転画像をより素早く解析するため、右半身の信号が左脳に伝わり、左半身の信号が右脳に伝わる形で神経線維の交差が生まれた。
2.進化の過程から考える
2-1 内胚葉から分化する器官は基本的には体に一つ
 内胚葉は、卵割の際原口が陥没してできる中空の一つの管であり、将来消化管になる。よって、一つの管から一つの消化器系器官(胃、腸、肝臓、膵臓)が生じる。
 しかし肺は例外であり、左右一対である。脊椎動物は祖先である魚類の頃はエラ呼吸をしていた。エラは左右で一対の器官であったが、魚類が両生類に進化して陸上へ進出した際、エラが退化して代わりに肺が生まれた。このようにして、左右一対のエラの後に左右一対の肺が生まれた。
2-2 中胚葉器官は体腔の余白に生まれる
 中胚葉器官は進化の後半で生まれた。中胚葉は外側の外胚葉と真ん中の内胚葉に取り囲まれた胚葉(体腔)であり、体腔内にできる外胚葉器官や内胚葉器官の余白スペースに形成される。この体腔内には進化の前半で消化器系器官が既に形成されていた。
2-2-1 心臓は脊椎動物では一つ
 脊椎動物では、体腔内の右側に内胚葉由来の肝臓が、反対の左側に心臓と脾臓が一つづつ形成されるように進化した。
2-2-2 腎臓や性腺は背側に左右一対形成される
 生殖器官は消化器官と同様に進化の前半には生まれていた。腎臓や性腺は体腔内の背側のスペースに左右一対形成されるように進化した。