タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ノミに心臓はあるか?

 今日は無脊椎動物の循環器系について調べた。「ノミの心臓」という言葉がある。気が小さくて臆病なことを意味するが、そう言われたノミはさぞかし心外であろう。だいたい、ノミが人間と同じように、血液を全身に送り出すポンプ役としての心臓を持っているかどうかも知らないで、よくそんなことが言えたものである。

 上図は昆虫の体の構造を示す。循環器系が赤色で示されており、腹部に心臓があることが分かる。ただ、昆虫の心臓はヒトの心臓とは大きく異なっている。
1.昆虫の血液は酸素を運ばない
 昆虫の血液はヒトで言うリンパ液のようなもので、酸素を運ぶ担い手であるヘモグロビンを含んでいない。従って血液の色は赤ではなく緑色または黄色である。
 酸素と二酸化炭素の交換は、全身に張り巡らされた気管を通じて行われる。
2.昆虫の循環器系は開放系
 昆虫は背側に1本血管があるだけで、ヒトのような動脈や静脈がなく毛細血管もない。昆虫の血液(リンパ液)は基本、体腔内を自由に流れる(開放系)。1本ある血管の途中にはチャンバーがあり、このチャンバーの収縮により、尻側から頭側へ血液が流れる。この複数のチャンバーが昆虫にとっての心臓になる。
   
 上図はタコ(軟体動物)の体の構造を示す。
1.タコやイカの血液の色は青色
 タコやイカなど軟体動物の血液は青色である。これは血液の成分としてヘモグロビン(赤)ではなくヘモシアニン(青)が含まれるからである。ヘモグロビンは鉄を含んでおり、この鉄が酸素と結びついて鮮やかな赤色になるが、一方でヘモシアニンには銅が含まれていて、この銅が酸素と結びつくと青色になる。タコは昆虫と違って水棲であり、鰓(えら)呼吸にて酸素を取り入れ、その酸素を血液にて全身に輸送する。
2.心臓が3つある
 タコやイカには、全身に血液を送る心臓の他に、鰓(えら)に血液を送る心臓(鰓心臓)が左右2つ、合計3つの心臓がある。

 脊椎動物ヘモグロビンを選択したのに対し、軟体動物はどうしてヘモシアニンを使うように進化したのであろうか? 鉄はそこらじゅうにあるが、銅は微量にしか存在しない元素である。タコやイカは運動量が多いから、しっかりと酸素を運ばないといけないし、銅を含んだ食物をせっせと摂らないと貧血になるのではなかろうか?