タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

温室効果ガスと地球の熱収支

 気候変動対策を協議する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は13日夜(日本時間14日早朝)、石炭の使用をめぐり最後まで交渉を重ねた末、成果文書「グラスゴー気候協定」を採択した。今日は温室効果ガスについて調べてみた。f:id:TatsuyaYokohori:20211115103944p:plain
 上図は温室効果ガスがない場合とある場合の地球の温度を表している。最近、温室効果ガスがまるで悪者のように言われているが、これがない場合の地表の平均温度は ー18℃と極寒の寒さになり、もしそうなっていたら、地球は高等生物が誕生していない星となっていたであろう。図の右側は温室効果ガスがある場合を示しているが、地球に大気があるため、地表から赤外線放射により宇宙空間へ放出する熱が、ある程度大気に留まり地表へも反射されるため、地表の平均温度も15℃ と生物にとって生存可能な温度になる。
f:id:TatsuyaYokohori:20211115105452p:plain
 上図は、地球の熱収支(エネルギー収支)をまとめたものである。太陽から地球が受け取る熱量を100として、宇宙空間と地表で熱収支がどう平衡状態にあるかを示している。(図には、受け取る熱量が正の値、失う熱量が負の値で示されている)。
 この図によれば、大気による放射熱(地表からの赤外線放射)の遮断効果は、地表から大気への放射熱 117 と宇宙空間への放射熱 6 の合計の 123 であるのに対し、大気から地表へ 103 の熱量が返されていることが分かる。これは正に、地球という体に大気という服を着せて暖めている(熱が外へ出ることを防いでいる)ことを意味する。
 この図には、人間活動により生じた熱量の記載が全く無い。例えば原子力発電により産み出される熱量は、地球上に存在する発電所全基を合計すれば膨大な量となるはずだが、この図には記載されていない。この理由は、太陽から毎時受け取るエネルギー量が膨大過ぎて、人間が産み出すエネルギーが微々たる(無視できる)ものだからである。しかしながら、国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断定した。人間が産み出す熱は温暖化に関係無く、人間が産み出す温室効果ガスは温暖化に影響を与える。この違いはどこから来るのであろうか? この疑問に対する答えは、「人間が産み出す熱量は、毎時毎時の熱量としては太陽から受け取る熱量に対して微々たるもので無視できるが、人間が産み出した温室効果ガスは、産業革命以降で産み出したガスの累積で効いてくるので無視できなくなる」となる。
 次に、温室効果ガスについて調べてみた。
f:id:TatsuyaYokohori:20211115114923p:plain
上図は二酸化炭素や水蒸気が赤外線を吸収する原理を示している。気体は分子の形により、赤外線を吸収したり しなかったりする。大気中には大量の酸素ガスや窒素ガスが存在するが、これらの気体分子の形は直線状であり、上図 二酸化炭素(直線状分子)で示す対称伸縮振動しかしないので赤外線は吸収しない。従って、大気中で温室ガス効果の大きい気体は、水蒸気と二酸化炭素になる。
 f:id:TatsuyaYokohori:20211115155517p:plain
上図は地表から宇宙空間へ放熱される赤外線スペクトルである。青線が地表レベルを表し赤線が大気上端レベルを示す。従って、この{青線レベルー赤線レベル}が大気で吸収される熱量を表す。この図でも分かる通り、赤外線を吸収する大気の2大成分は水蒸気と二酸化炭素になる。大気中の水蒸気は海水との平衡状態を維持してずっと一定であるが、二酸化炭素の方は人間活動により、化石燃料が燃やされ大気中に放出された結果、漸増傾向にある。カーボン・ニュートラルが叫ばれるのはこのためである。