タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ほんまかいなと思った論文記事

 ネット記事を読んでいたら「火星で最初に生まれた生命は自らが引き起こした気候変動のせいで絶滅してしまった可能性」というタイトルが目に止まった。読んでみたら、衝撃的な内容が書いてあった。
 『2022年10月10日、学術誌のNature Astronomyで「初期の火星のハビタビリティ(居住可能性)と惑星全体での冷却化は水素ベースのメタン生成微生物により引き起こされた」という論文が発表されました。この論文によると、約37億年前の火星の大気は同時期の地球と類似していたものの、火星で誕生した最初の生命である「水素を消費してメタンを生成する微生物」が大気を生物が生存できないほど冷却してしまったため、今のような生物の存在しない環境に変わってしまったとのことです。』
と書いてあった。この記事には続けて、
 『「水素を消費してメタンを生成する微生物」は強力な温室効果ガスである「水素」を消費し、水素よりも貧弱な温室効果ガスの「メタン」を生成します。その結果、火星はゆっくりと熱を大気中に閉じ込めることができなくなってしまい、最終的に火星は非常に寒い「複雑な生命の進化には向かない惑星」へと変わってしまったそうです。』
と書いてあった。
 私は『ほんまかいな?』と思った。だいたい、水素ガスは温室効果ガスではない。以下の図は温室効果の原因となる赤外線吸収のメカニズムを示すが、酸素も窒素も水素も分子の構造が直線状になるから「対称伸縮振動」となり、赤外線吸収無しとなるので、温室効果ガスとは成り得ない。

 また、「火星で最初に生まれた生命」については、東工大と名古屋大の「火星の水が失われた歴史を解明」と題する共同研究論文から、以下の図に示すように、37億年前の火星には、かなりの水が存在していたと考えられる。

 10/12(水)のブログでも書いたが、地球と同じように火星も誕生して数億年の間に、水を多く含む小惑星との衝突により「水の惑星」へと変身していたわけであるから、その惑星に生物が誕生していても別におかしくはない。
 ただ、「最初に生まれた生命」が「水素ベースのメタン生成微生物」と言われると疑問符が付く。今地球上にいるメタン生成菌は、有機物の分解の最終段階を担う生物であり、従って、メタン生成菌は有機物が無ければ存在し得ない。そして、もしこの記事の「メタン生成微生物」が地球上に存在するメタン生成菌のようなものであったとしたら、その環境には、水と二酸化炭素から光合成により有機物を作り出す微生物もいたことになる。シアノバクテリアの祖先は30~25億年前に地球上に出現し、初めて酸素発生型光合成を始めたと考えられている。37億年前の火星で、シアノバクテリアのような生物がいて有機物を生成していたとは考えられない。
 また、「水素ベースのメタン生成微生物」を「水素ガスを燃やして、そのエネルギーでメタンを生成する微生物」と捉えるなら、『だいたい火星には水素ガスも微量だし、それを燃やす酸素も無かったのではないか?』と思ってしまう。メタン(CH4) の炭素と水素はどこから来たのかと思ってしまう。
 結局、疑問符だらけで読み終えた まゆつば の記事になった。