タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

経済のお勉強 マネタリーベースとマネーストック

 昨夜、海外市場で為替レートが1ドル154円台まで円安に進んだ。3週間前に1ドル152円台を伺う展開になった時は、財務省が為替介入の姿勢を見せただけで勢いが止まり、その後はこの152円のラインで小幅な値動きが続いていた。週明け後の動きは急であり、この後市場がもし155円台に突入するようなら、日本政府はいよいよ為替介入に踏み切るかもしれない。
 最近、ブログに経済記事をよく書くようになってきたが、理系の私が経済の勉強を始めたのは、会社を辞めた後である。どうも経済の本質を理解できていない気がするので、今日は日本の経済の全体像をお金の観点からまとめてみようと思い色々調べてみた。

 上図は日本経済の現状をお金の観点からまとめた全体像である。
1.マネタリーベースとマネーストック
 マネタリーベースとは「日銀が供給する通貨の総量」と呼ばれているが、具体的には、「現金通貨+日銀当座預金」の総量で表される。マネタリーベースは日本銀行市中銀行間の取引きに使用される通貨の総量となる。これに対しマネーストックの方は、市中銀行と民間の間の取引きに使用される通貨の総量となり、具体的には「現金通貨+預金通貨」で表される。
2.お金は借金で生まれ返済で消える
 預金通貨は借金で生まれる。経済学では、この通貨が生まれることを「信用創造」と呼ぶ。上図では、市中銀行Aが会社Aに支払いを行う時と、市中銀行Bが会社Bへ貸付を行う時、信用創造にて預金通貨が新たに生まれ、マネーストックが増える。借金をする主体は、前者では日本国政府、後者では会社Bとなる。預金通貨は、通帳に金額を書き込むことで生まれるのである。
3.アベノミクスで市場にじゃぶじゃぶお金を投入したが景気が良くならなかった理由
 黒田日銀総裁は、異次元の金融緩和と称して金利を下げ、広義流動性(債権市場)にあった国債の半数近くを買い上げ、マネタリーベース内の日銀当座預金量を史上かってないレベルにまで増やしていった。以前までは、金融緩和してマネタリベースが大きくなれば、信用創造が活発となり、乗数効果でその何倍もマネーストックが大きくなったのだが、デフレ経済の中ではマネーストック量はそれほど大きくならなかった。黒田総裁はマイナス金利まで導入し、市中銀行から民間への貸付を促したが、この奥の手も芳しい成果を生まず、マネーストック増加の多くの分が貯蓄(滞留的預金通貨)に回り、経済を回すお金としては使われなかった。
4.デフレ時代にやるべき政策
 デフレ期に金融緩和を行うのは政策的には間違っていない。しかしながらデフレ期には、金融緩和しても企業による信用創造はあまり期待できない(毎年売上げが下がる中で経営者は設備投資をしようとは思わない)。こんな時は、政府による財政出動(具体的には公共事業の執行)こそが有効需要を産みだし、経済を回すカンフル剤になる。アベノミクスは第1の矢が「大胆な金融政策」、第2の矢が「機動的な財政出動」であって、第1の矢は実行されたのだが、第2の矢は財務省の抵抗で十分に実施できなかった。そしてそればかりか、有効需要を減らす消費増税を2回もやってしまい、デフレ脱却の芽を摘んでしまった。デフレ期の正しい政策とは、金融緩和に加えて、国債を増発して財政出動を大幅に増やし、預金通貨と有効需要を増やしながら経済を回すことである。





実質的に終了していたマイナス金利

 日銀のマイナス金利解除のほのめかしがあってから一ヶ月が経過した。イールドカーブ・コントロールの終了に伴い、長期金利(10年物国債利回り)が0.86%まで上昇したと言う。下図には、国債の利回り曲線(イールドカーブ)が示されているが、日銀がイールドカーブ・コントロールを終了したため、不自然に下がっていた10年物国債の利回りが上がり、このカーブの凹みが解消され、カーブ全体が上へ(金利上昇の方向)振れ始めた。長期金利は住宅ローンの固定金利と連動するが、この固定金利は昨年から既に上昇基調で推移している。

一方で、短期金利の方には目立った動きがまだない。


 上表は日銀が発表した「業態別の日銀当座預金残高」からの抜粋であるが、市中銀行が日銀に預ける当座預金の利率を、①プラス金利、②ゼロ金利、③マイナス金利に分けて表している。これを見ると、今年の1月以降でマイナス金利の割合が1%未満になっていたことが分かる。これは、3月に発表されたマイナス金利の解除が、銀行関係者にとっては既成の事実であり、銀行業務にほとんど影響を与えなかったことを意味する。住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートに連動すると言われているが、ここまで短期プライムレートは全く動いていない。息子が変動金利でマンションローンを組んでいるので、短期プライムレートの今後の動きが気になるところである。




収入の枠内での生活が是か非か?

 今日お昼のTV番組で、今騒ぎとなっている水原一平氏の賭博損失額が62億円と聞かされ唖然とした。2021年12月から2024年1月までのおよそ2年間で、賭けに勝った総額が218億円、負けた総額が280億円とのこと。ギャンブル依存症は勝った時の記憶がいつまでも残り、『今度こそ勝てる』と思い深みに嵌ってしまうのだろう。それにしても、一人の一般人がそんな大金を動かせる現代は、考えようによっては恐ろしい時代である。
 FXでは、証拠金として預けた資金の何倍(最大25倍)もの金額の外国為替取引が可能である。このように少ない資金で多額の外国為替取引ができることを、「てこ」の原理になぞらえて「レバレッジ効果」と呼んでいる。もし、手元に10万円の資金があれば250万円の為替取引が可能となり、儲けも損失も25倍に膨れ上がる。金融の世界では、この「レバレッジ」を使った金額膨らまし効果もあり、世界中で昼夜を問わず大金が飛び交っている。
 私は個人的には、『収入の枠内で人並みの生活ができればそれで良いのではないか』と思っている。この「収入の枠内」という考えは、一般の日本人の標準的な考えに思える。一方で米国では、住宅に限らず様々な物品をローンを組んで購入するから、同じ「収入の枠内」と言っても、生活の営み方は随分違ってくる。
 さて、これら家計での「収入の枠内」という考え方を、そのまま国家の財政運営に持ち込むと国の経済運営に大きな支障を来たすことになる。何故なら、家計においては、収入の枠内での生活(収入>支出)があるべき姿であるのに対し、国家の財政運営においては、むしろ、赤字運営(収入(税収+税外収入)<歳出)の方が望ましいからである。それでは何故、家庭と国家の間でこんな差が生じるのであろうか? この理由を理解するのはなかなか難しいが、ヒントは、貨幣の本質を知るところにある。その本質とは、「お金は国が借金することで生まれ、その借金を返すことで消える(注)」という俄かに信じ難いところにある。この本質が分かれば、国が国債を発行して借金をすることでお金が新たに生まれ、その新たに生まれたお金で経済が成長することが理解できる。そして、逆に国が借金を返せば、国の中を流通するお金の量が少なくなり経済がシュリンクすることも理解できる。従って、インフレにならない程度に国が借金を増やすことは「善」であり、そんなことも分からず借金を減らすことは「悪」となる。
 財務省は、この「収入の枠内での財政運営(=プライマリーバランスの均衡化)」を広く国民に訴え、大多数の国民は、これが間違った政策とは気付いていない。むしろ、真面目な日本人は、国家においても倹約は正しい道で、国家の赤字は悪だと信じている。そして、国民ばかりでなく、ほとんどの政治家も、財界も、マスコミも、プライマリーバランス均衡化が悪政だと気付いていない。
 私としては、間違った政策で貧困への道を歩み続ける日本を見ているのが何とも歯痒いのだが、真実は一つ、その内皆分かってくれる日が来るだろう と思うしかない。

(注)正確に言えば「お金は誰かが借金することで生まれ・・・」となるが、その誰かの大元になるのは国であり、国家が国債を発行することでお金が生まれることになる。日本が高度経済成長をしている頃は、企業が大量に借金をしてお金を産みだし経済が回っていたが、デフレ期には借金を返し負債を減らして体質強化に走ったので、市中を流れるお金がどんどん減っていった。国債残高が1400兆円に膨らんだと喧伝される裏で、家計の金融資産残高は2100兆円にまで膨らみ、この国民による貯蓄行為も市中を流れるお金の量を減らす方向へと働いた。

ツバメの新年度が始まった

 今朝のウォーキングで今年初めてツバメを見た。しかも、5、6羽飛び交っていたので、南の国から最初の一団が到着したのであろう。川面すれすれに滑空したかと思えば急上昇し、青空へ吸い込まれるようにして点となった。ツバメの先発隊はオス中心に構成され、目的地に着いてからは営巣地を探し、メスを受け入れる準備をする。今日見たツバメも、速くて強くて元気なオスたちだったのであろう。
 少し遅れてメスたちや昨年生まれた若鳥が到着する。そこで、気の合ったオスとメスがつがいとなり愛を育む。つがいは、昨年のパートナーと同じ組み合わせであることもあれば、異なることもある。ツバメの寿命は2,3年であるから、生まれて2年目で晴れてつがいになっても、次の3年目で双方とも生き永らえている確率は50%である。生き延びた方の50%は、新しい伴侶とつがいになるのである。
 ツバメの日本における最大の達成目標は、子孫を作り育てることである。メスは5,6個ほど卵を産み2週間ほど抱卵する。孵化した雛は3週間ほどで巣立ちする。巣立ち後の雛はしばらくの間は親から給餌を受けるが、1,2週間して自分で餌が捕れるようになるとヨシ原等で親鳥と共に集団となって過ごす。このようにして、ツバメの日本における滞在期間の中で、前半は家族の営みの中で過ごし、後半は集団の中で一羽の鳥として過ごす。夏の間、南へ渡れる体に成長したツバメは、9月~10月になると体内に分泌されるホルモンの影響で、南へ渡りたい心が無性に疼き出す。そしてある時、意を決して、脳裏に浮かぶ磁力線の方向へと飛び出していく。ツバメの1年は、このようにして、新年度が始まるように日本での新しい生活を始め、上半期が終わるように日本生活を終了し、下半期は南の国で過ごす。ツバメが人家の軒下に巣を作るのは、天敵を避けるためである。別に人間が、ツバメに好かれているわけでもないが、嫌われてもいないだろう。これからもずっと共存したい生き物の一つである。

設計不具合と製造不具合

 小林製薬の紅麴健康食品問題で、「機能性表示食品」の問題が指摘されている。比較対象となるのが「トクホ:特定保健食品」である。特定保健食品の方は、実際の製品を使った臨床試験が必要なため、申請して許可を得るまで数年かかると言われいる。一方で機能性表示食品の方は、臨床試験の必要がなく、「安全性」や「機能性」の根拠に関する情報などを国に届け出るだけで良いので、手続きは数ヶ月で済むと言われている。それでは、今回もし、小林製薬の紅麴健康食品でトクホの認定に必要な臨床試験をやっていたら死亡事故は防げていたであろうか? 答えは「NO」である。何故なら、紅麹自身に問題が無いので、紅麹の有効性や安全性を確認する臨床試験をいくらやっても今回の問題が浮かび上がらないからである。
 私は昔機械メーカに勤めていて、自社製品の不具合を何度か経験した。製品の不具合は、設計不具合と製造不具合に分類できる。薬に例えるなら、設計不具合とは、薬の成分やその比率、服用指針に問題があって起きる不具合であり、これは臨床試験で問題が無いよう潰し込むことができる。しかしながら今回の問題は、製造工程での異物混入であり、明らかに製造不具合である。製造不具合は臨床試験では潰し込みができないのである。
 死者が出ている話だから何等かの対策が必要となるが、「機能性表示食品の制度設計が悪い」と評論家気取りの抽象論を唱えても事は解決しない。製造、輸送、保管工程を含めて、製品(食品)の安全性を担保できるよう、制度の見直しが必要となるだろう。食品群を分類して、物によっては「製造工程認証」が必要になるかもしれない。また、不具合が生じた時の報告義務に関しても、きちんと規定することになるであろう。

春の心を穏やかにするには

 今日午前中はいつものパークゴルフ神通川上流の河川敷にあるパークゴルフ場では、土手の桜が五分咲きぐらいに開いていた。

 上は近所のいたち川の桜であり、こちらも五分咲きぐらいで、数日後には満開になるであろう。ふと、高校の古文で習った歌「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(在原業平朝臣)」を思い出した。この歌の解説としては、
「世の中に桜がまったくない」というありえない状況を想定し、桜がなかったら「咲いたかな」「もう散るのかな」と思い煩うこともなく穏やかにすごせただろうにと思う。でも実際には桜はあり、何とも悩ましい思いをかき立てている。その複雑な心情を通して桜の魅力、春の悩ましさを描いている。といったところだろう。
 何だか、平安貴族の、労働もせず優雅に歌を詠む姿が頭に浮かんでしまい好きになれない。今の私なら「世の中に花粉症がなかりせば春の心はのどけからまし」と詠むだろう。




政治不信を引き起こした張本人

 今年は自民裏金問題で政界が揺れている。昨日は離党勧告を受けた塩谷氏が勧告に異議を唱えて再審査請求の検討を表明した。この塩谷議員は、次期総裁候補にも成り得る安倍派5人衆と比べると、正直言って格が違う小物議員である。実際塩谷氏は前回2021年衆院選静岡8区立憲民主党源馬謙太郎氏(51)に大差で敗れ、比例復活で何とか議席を守った。この人が安倍派座長になったことで、ここまで政治不信を増幅させてしまった。
 国会の政倫審では、5人衆が、「キックバックを協議する会合では結論が出なかった」と言っているのに対し、塩谷氏は「なんとなくそういう(キックバックを続ける)雰囲気になった」と答弁した。この点をメディアは「意見の食い違い」と報道したが、ちっとも食い違ってない。真相は、結論は出なかったのであり、塩谷氏がこの問題を有耶無耶にして放置したのであろう。
 ここで、世間で言っているキックバックが何故止められなかったか考えてみる。安倍元首相は派閥パーティーを翌月に控えた2022年4月、還流の取りやめを提案したという。メディアは、キックバック=裏金として、まるで悪いことのように報道するが、キックバック政治資金収支報告書に記載すれば立派な「表金」であり、これ(収支報告書への記載)さえやっておけば、違法行為は無かったと言える。私は、安倍さんがキックバックをやめよと言ったのではなく、「キックバックも含めてちゃんと収支報告書に記載しないといけない」と指示したのだと思っている。そしてこの指示を伝聞情報として聞いた塩谷座長が、「キックバックが必要だと言う人もいる」という的外れなことを言いながら、安倍さんの指示は実行できないと考えこんでしまったのであろう。「キックバックしても良い、ちゃんと収支報告書に記載すれば良い」、こんなシンプルな指示を、派内を取りまとめて実行できなかったのだから、安倍派の座長として責任を取って政治家を辞めるのが当然である。
 この問題をここまでの大きな騒動にした一番の責任は岸田首相にある。今回の問題は、第一義的には「政治資金規正法違反」の問題であり、この問題が発覚した時点で岸田首相は「法律違反を犯した者は党として厳しく処分する」と言うだけで良かった。それなのに、岸田首相はこの問題を安倍派潰しに使えると思ってしまった。そして突然、岸田派を解散させてしまった。まるで派閥が悪いかの印象を国民に与えたのである。岸田さんもメディアも国民も問題が何かを分かっていない。問題は大きく二つに分類できる。
 1.政治資金規正法違反の問題
  → 党として違反者の処分を決める
 2.法律自身が不備である問題
  → 法律の改正点を詰める
 このように整理し対処すべきだったのに、岸田首相はこの問題を、国民の政治不信を増幅する方向へ持って行ってしまった。野党も野党である。問題解決に貢献しないことばかり言い張り、自民党のイメージダウンこそが我が道と策略を巡らした。東京地検特捜部が地方からの応援も含めて大々的にやった捜査で、大した成果(大物政治家の逮捕)も出なかったのだから、議員であるあなた方素人の集まりが、新しい証拠も無く証言のみで国会追及したって、真相が暴かれるはずがないのである。岸田首相は、こんな野党評論家軍団に恰好の突っ込みどころを与えてしまった。1月2月3月と不毛な党利党略の政争が続いた。岸田さん、あなたも責任を取る必要がある。