タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

円安差益還元と隠し金開放

 今週明けから円安が更に進み、ここ数日1ドル154円台で推移している。円安は輸出業者にプラスに働き、またインバウンド需要も伸びるので、GDPを押し上げる要因となる。従って円安は、日本経済にとってトータルで見ればプラスであるのだが、マイナスの影響を受けるところもあり放置できない。一番問題となるのは、プラスの影響を受けるのがグローバルにビジネス展開をしている大企業であり、マイナスの影響を受けるのが国内で細々とビジネスを行う中小の企業となる点である。こんな時やるべき政策は、円安差益を困っているところへ振り当てることである。

 上表は昨年11月末時点の外貨準備高の内訳である。日本政府は総額1.27兆ドル(1ドル150円換算で190兆円)もの資金を保有している。為替レートは3年前が110円/ドルであったので、この3年間で外貨準備におよそ50兆円もの為替差益が生じている計算になる。政府がここで「為替介入」と称して、0.1兆ドルのドル売りを行えば(注)、市場から15.4兆円の資金を調達できる。そしてこれを1億2千万人の全国民にばらまけば、一人当たり12万8千円のボーナス給付金となる。このようにして、円安の恩恵を国民皆で享受できるようになるのである。もし岸田さんがこの政策を実行するなら、支持率は間違いなく回復するだろう。しかしながら、財務省の言いなりになっている現政権が、そんな「ばらまき政策」をできるはずがない。

 上表は、今年度の外国為替資金特別会計(略して 外為特会)の予算書である。こんな、歳出より歳入が3兆円も多い予算書を初めて見た。財務省は歳出を削ることを生きがいにしている人達の集団であるが、この外為特会については身内の予算となり、しかも隠し金予算となるので、こんないびつな形(歳入>>歳出)となっているのであろう。この歳入費目の中で「運用収入」が隠し金となる。外貨準備高の内訳の一つに「米国国債」があるが、現状の米国国債利回りを年利3%とすると、日本が保有するこの債権は、毎年およそ300億ドル(1ドル150円換算で4.4兆円)の運用収益(利子)を産み出す計算となる(予算書内の値とほぼ一致するので、この推定は正しいだろう)。この外為特会予算の歳入超過分3兆円を一般会計に繰り入れ、異次元の少子化対策に当てれば、岸田さんは「国民の負担ゼロで少子化対策をやり切ります」と主張できる。でも、財務省の提案を鵜呑みにするしかない現政権が、そんなウルトラC的良案を思い付くはずがない。実に無念である。

(注)1000億ドルものドル売り介入を行えば、為替が円高に動くことは疑いない。ただ、一旦為替介入をすれば、相場は急激に円高に動くだろう。日本は変動相場制の国であり、「為替介入は過度な変動や無秩序な動きへの対応のために行われる」とG7で申し合わせている。こんな大量の資金を為替介入として売り切ることは実際問題難しいだろう。