タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ノーベル賞の母と金メダリストの娘

 昨日、2023年のノーベル生理学・医学賞が「メッセンジャーRNA」(mRNA)ワクチンの基盤技術を開発した米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)と同大のドリュー・ワイスマン教授(64)に贈られると発表された。
 カタリン・カリコ氏については、2年前のブログで既に書いているが(2021年9月17日のブログ)、彼女はハンガリー生まれで、1985年 30歳の時、夫と幼い2歳の娘とともに渡米した苦労人である。1985年と言えば、世の中はまだ冷戦時代であり、共産圏のハンガリーから米国へ ほんの僅かな持ち金を娘の縫いぐるみの中に隠して出国したのであった。(通貨持ち出しが厳しくチェックされた時代であった)今日は彼女の業績について調べた。

1.mRNAの発現効率を高める手法の開発(2005年)
 mRNAワクチンは、投与されると細胞内に入り抗原物質を産生して免疫反応(獲得免疫)を誘導する(抗体が産生される)。しかしながら2005年までは、mRNAを投与しても、それが抗原物質を産生する前に自然免疫の仕組みにより破壊されてしまい、十分な抗体量が産生できなかった。彼女は、天然のmRNAには含まれない、異なるタイプの核酸分子(シュードウリジンpseudouridineなど)を含んだmRNAを用いると、自然免疫が誘導されにくくなることを発見した。この異なったタイプの核酸分子を用いることで自然免疫をかいくぐり、結果十分な量の抗原が産生され、十分な量の抗体が産生できるようになった。
2.mRNA合成時の不純物を取り除き抗体産生効率を高める手法の開発(2011年)
 mRNA合成時に不純物(contaminants)が混入すると、この不純物が自然免疫を誘導してしまい十分な量の抗体が産生されない。彼女は、この不純物を除去する方法(HPLC高速液体クロマトグラフィー)を開発した。

P.S.
 2歳で故国を後にした彼女の娘は、米国のボート競技の代表となり、08年北京五輪と12年ロンドン五輪の2大会で金メダルを獲得した。お母さんがノーベル賞で娘が金メダリスト、素晴らしい。