タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

「平均」という語感が作り出す誤解

 先日TVの中で、「死亡年齢のピークは平均寿命を超える」と言っていた。実際は下図のように、一番多くの人が亡くなる年齢は男性も女性も平均寿命を超えている。
  
 ただこのグラフは注意して見なければならない。死亡者数という生データをグラフにしただけであり、統計処理をしてないから、人口が多い団塊の世代の年齢帯に小高い山ができているのが確認できる。これを統計処理(実際は、単位人数に対し0歳から年齢毎の死亡率を掛けて生存人数を算出し、その操作を1歳、2歳と繰り返して何歳で何人が生存しているかを算出する処理)して滑らかな死亡者数曲線にしたのが下図である。

 このような度数分布曲線に対し、統計量としては、平均値、中央値、最頻値 が存在する。このグラフの場合、平均値は平均寿命、中央値は50%の人が亡くなる(生存する)年齢、最頻値は一番多くの人が亡くなる年齢を示す。このグラフは2016年の値を示すが、平均寿命(男性81歳、女性87歳)に対し、中央値が2歳、最頻値が6歳上回っていることが分かる。平均寿命を超えたからと言って、半分より上になったわけではないのである。それでは、平均寿命に到達できる人は何割いるのであろうか?

 上図は、厚生労働省が公表している生存数曲線(男)であり、母数10万人に対し各年齢で何人の人が生存しているかを表している。赤線は生存数5万人のラインであり、曲線との交点の値は中央値を示す。令和2年の中央値が84歳を超え85歳まで迫ろうとしていることが読み取れる。緑線は平均寿命を示し、これと曲線との交点は平均寿命で何人生存しているかを示す。令和2年の曲線から、平均寿命で生存している人の割合が約6割と読み取れる。
 さて、話はがらりと変わるが、以下の図は、所得金額階層別の世帯数を表している。そしてこのグラフの中にも平均値と中央値が示されている。
 
 このグラフには、平均所得金額以下の人が61.5%とも示されていて、これは、平均所得ぐらいを稼いでいる人は、「中の中」ではなく「中の上」のクラスであることを意味する。
 寿命のグラフでは平均以上が6割、所得のグラフでは平均以下が6割となった。この違いは、山が右寄りか左寄りかの違いから生まれる。一般には、「平均」という語感から6割という値が頭に浮かばない。「平均」は、母集団の形により上振れもすれば下振れもする。言葉と実際のずれに注意が必要と思った次第である。