タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

セミと共生真菌

 今年は梅雨明けが早かったため、セミが鳴き出すのも早かった。セミの種類と分類について調べていたところ、面白い記事を見つけたので紹介したい。

 上図は日本にいるセミ系統樹であり、私が幼少期に接したセミ赤枠で囲ってある。皆捕獲対象であったが、ミンミンゼミだけは1回も捕まえることができなかった。青枠で囲ってあるクマゼミは、社会人として関西に住んでいた時に初めて接したセミで、関西では人もよくしゃべるがセミもうるさく鳴くものだと思った。
 この図には、セミの共生細菌が〇印にて付記されており、共生細菌(サルシア、ホジキニア、共生真菌)の種別でもって色分けされている。この論文によれば、米国で発見された共生細菌(サルシア、ホジキニア)とは異なり、日本のセミの多くは、ホジキニアではなく真菌との共生が見つかったという。そしてこの共生真菌は、セミ寄生性の冬虫夏草類ときわめて近縁であることがわかったそうだ。冬虫夏草や近縁の菌類はしばしば漢方薬として利用され、免疫抑制剤など生理活性物質の産生菌としても知られている。日本のセミはこれらの真菌と共生することで、必須アミノ酸等の提供を受けているのだろう。

 上図はセミ冬虫夏草の寄生共生関係を示している。冬虫夏草は「虫から生えるきのこ」の総称で、昆虫やクモなどに寄生するきのこ(菌類)である。この図の内側の青矢印が、セミに寄生した冬虫夏草のライフサイクルを示す。また外側の矢印は、セミ冬虫夏草の共生のライフサイクルを示す。分析の結果、寄生関係から共生関係への進化が繰り返し起こったことが実証され、寄生微生物と共生微生物の間の予期せざる深い関係が明らかになった。
 共生関係はいきなりできるものではない。寄生側が勝った場合 「寄生」と言い、宿主側が勝って寄生側が残った場合は「共生」と言うのであろう。最初は寄生され敗北から始まったのだが、長い戦いの中で互いに進化し、折り合いを付けることができたのであろう。
 今日は、セミも微生物と共生していることを初めて知った。人間も腸内に、自分の体の総細胞数を超える腸内細菌を住まわせ共生している。生物界は、弱肉強食の中で捕食し捕食されながら、配偶者獲得のため競争相手と戦い、ウイルスや病原菌とも戦いながら、一方で、微生物と共生していることになる。すごい世界で生きている。感動的だ。