タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

トマトは成熟まで時間が掛かる

 今年はミニトマトの生育が遅れているため、収穫がまだ最盛期に入っていない。昨日はキュウリの成長の速さの理由を書いたが、今日はトマトの成熟に時間が掛かる理由について調べた。

 上はキュウリの花(左)とトマトの花(右)を比べたものである。大きな違いとして、キュウリが雌雄異花であるのに対し、トマトの方は雄花と雌花の区別が無く、花びらの中央に突き出た房の中に雄しべと雌しべがあり受粉する構造になっている。キュウリの方は、開花の時点で将来実となる組織の細胞分裂が完了しており、原型ができ上がっているが、一方でトマトの方は、将来実となる子房の成長は受粉成功後に始まる。つまり、キュウリとトマトを比べる際、開花時点をスタートポイントとすれば、トマトはスタート時点でもう既に遅れをとっていることになる。このようにしてトマトは、開花後の第1ステップとして、未成熟の青い実になるだけでも、キュウリ成熟までの時間以上に時間が掛かる。

 トマトは第2ステップとして、青い実が赤く色づくまでにも時間が掛かる。上図はトマトに含まれるアミノ酸を示すが、多種類のアミノ酸が含まれていることが分かる。昨日は、キュウリは水膨れの高速成長であることを示したが、一方でトマトは手間暇掛けて実に栄養素を貯め込むため、成熟まで時間が掛かることになる。トマトは何故こんな手間暇掛けるような姿に進化したのであろうか? もちろん、人間に食べられるようになった後の進化は「品種改良」によるところが大きいが、それ以前の原種の進化も、動物に好んで食べてもらい種を広範囲に撒き散らすためであったに違いない。
 実際、トマトに含まれるグルタミン酸の量が多ければ甘くなり、アスパラギン酸の量が多ければ酸っぱく感じる。グルタミン酸アスパラギン酸の量がおおよそ3:1となった時、おいしいトマトになる。そしておいしければ、色んな動物に食べてもらい、子孫の植生帯が広範囲に広がることになる。
 トマトはどのようにして赤く色づくのだろうか? 一般に果実の成熟にはエチレンが関与している。トマトの場合も、成長が進むとエチレン生成の遺伝子が働き始め、生成されたエチレンが、果実の呼吸量を増大させ、クロロフィル葉緑素)の分解後に起きるリコピンなどのカロテノイドを合成する。つまりトマトが色づくのは、葉緑素(緑色)が分解され、それと並行してリコピン(赤色)が生成されるためである。
 トマトは栄養価の高い食材である。トマトにはグルタミン酸と同時に、グルタミン酸から脱炭酸反応で合成されたγ- アミノ酪酸GABA)も多い。GABA の生理機能としては、血圧上昇抑制効果、精神安定作用、肝機能改善効果などが知られている。また、6/30のブログで示したが、GABA作動性ニューロンは睡眠システムの中核的存在であり、睡眠の質を高めるGABAサプリメントが市販されている。また、熟した赤色を産み出すリコピンは強い抗酸化作用を持ち、人の体の中で抗菌、抗炎症、免疫力の向上など、さまざまな働きをしている。
 このようにして、我が家の家庭菜園のミニトマトも、今一生懸命栄養素を作り貯め込んでいる最中だから、赤く鈴なりに実るのは、もうしばらく待つことにしよう。