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田舎の年金暮らしのたわごと

ミトコンドリアとの共生が進化の方向を決めた

 昨日のブログでは、真核生物の祖先とミトコンドリアとの共生について話をした。今日は、その共生が生物の進化にどう影響したかを探ってみたい。

 上図は原核細胞と真核細胞を比較した図であり、下図は原核細胞生物である大腸菌と真核細胞生物であるゾウリムシを比較した図である。

 原核生物と真核生物の違いは、細胞核が有りDNAが核内で守られているか(真核生物)、そうでないか(原核生物)である。真核生物の祖先がミトコンドリアの祖先と共生を始めた頃、真核生物祖先の細胞サイズは今より小さく、また、細胞内の構造は単純であった。ところが、ミトコンドリアとの共生は大型化を可能にした。ミトコンドリアは、有機物を代謝してATPというエネルギー物質を作るが、真核生物祖先は、このミトコンドリアを細胞内に多数持つことができるようになった。そしてこれが大型化を可能にしたわけである。原核生物においてのエネルギー獲得は、外界と細胞を隔てる細胞膜上で行われ、細胞の大型化は細胞膜から離れた細胞中心部でのエネルギー枯渇を意味する。一方で、ミトコンドリアと共生を始めた真核生物においては、細胞サイズに応じてミトコンドリアを細胞内に多数配置することができるので、細胞大型化に伴うエネルギー枯渇問題が無くなった。
 また、この共生がトリガーとなり、細胞内小器官(ミトコンドリア、ゴルジ体, etc.)が生まれ、細胞内の構造化が進んだ。
 真核生物であるゾウリムシは無性生殖でも増えるし有性生殖もする。有性生殖の際、2つの細胞の接合が行われるが、この接合に先立ち、大核が消失するとともに生殖核である小核が減数分裂を行い、4つの核に分かれる。このうち3つは消失し、残った1つがさらに2つに分裂し、このうち1つの核を互いに交換する。その後、それぞれの細胞内の2核が融合することで接合は完了する。すなわち、ゾウリムシの有性生殖は、子孫は増やさず、自己のDNAと他の個体のDNAを融合する形で行われる。このゾウリムシの有性生殖は、有性生殖の本質を示している。
 ミトコンドリアとの共生で始まった生物の進化は、細胞の大型化と構造化を経て有性生殖に発展し、多細胞化 および 生殖細胞と体細胞の分化を経て「性」の出現に至る。そして、性と有性生殖の出現に並行して、真核生物には、遺伝子の運び屋としての生物個体に寿命が設定され、寿命を全うした後の「死」が宿命となった。
 真核生物祖先がミトコンドリアを取り込み共生を始めたのが、およそ20億年前と考えられている。そして、ミトコンドリアとの共生というこの出来事が、我々人類を含めた真核生物の進化の方向を決めたことになる。20億年前に、「生」、「性」、「死」という生命の基本への進化の道が決定したわけである。