タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

昆虫の共生微生物

 3日前のブログ「キアゲハの幼虫がプランター栽培を台無しに」にて、この世は不思議な世界 と書いた。不思議と思われるのは以下の2点である。
蛋白質をほとんど含まない葉だけ食べて丸々太れる幼虫のたんぱく源は何?
・幼虫の体内に共生する微生物はいるのか? どのように幼虫の体内に入る?
そこで、昨日からちょっと調べてみた。以下に調査結果を箇条書きする。

1.栄養的に偏った食事の弊害を除く細胞内共生細菌
 -アブラムシが食する植物の樹液には糖分が多くカロリー的には十分だが、必須アミノ酸が不足している
 -アブラムシの体内には菌細胞という特殊化した細胞があり、この中にブクネラという共生細菌がいて、この細菌からアルギニンやトリプトファン等の必須アミノ酸を提供してもらっている。
 -ブクネラは、もともとアブラムシの消化管内にいたが、進化の過程で細菌自身のゲノムを大幅に縮小しながら、菌細胞に棲むようになったと考えられている
 -植物の樹液という栄養的に偏った餌に頼る セミ、ウンカ、カイガラムシ等も、それぞれ特有の細菌を共生させて栄養を補っている。
 -ブクネラの細胞内共生の場合、卵が母親の体内で発達する段階で共生細菌は受け渡されている

2.ゴキブリの細胞内共生細菌
 -ゴキブリは雑食性ではあるが、脂肪組織内に菌細胞を持ち、そこにブラッタバクテリウム族の真正細菌を棲まわせて共生している
 -ブラッタバクテリウム族細菌は、宿主から尿素の形で窒素化合物を受け取り、それを使ってアミノ酸ビタミンを合成している

3.シロアリの腸内共生
 -シロアリはゴキブリの一系統から進化したものだが、ブラッタバクテリウム族との共生を解消し、その代わりに多様な真正細菌を含め、メタン生成古細菌原生生物から成る腸内微生物群を持つようになった。
 -シロアリ腸内の微生物全体の重量はシロアリ個体重量の3割にも達する
 -シロアリが餌とする木材は、炭素源は豊富に含まれるが窒素源に乏しい食材である。シロアリ腸内に共生する細菌は空気中の窒素を固定している。また、老廃物として生成される尿酸は後腸で細菌により分解されアミノ酸ビタミンへ合成される。
 -シロアリの腸内細菌は、親から子へ、口移しや食糞により引き継がれる

4.カメムシ共生細菌
 -マルカメムシのメスは卵を産む時、その横に共生細菌の入ったカプセルを肛門から排出し添え付ける。幼虫は、孵化して直ぐにそのカプセルに口吻を突き刺し、共生細菌を吸い込む。
 -カメムシ科の大部分の種は、産卵時にメスが卵の表面に共生細菌入りの分泌物を塗布する。孵化した幼虫は、直ちに卵表面を舐め共生細菌を摂取する

 今回調べた中に、チョウ類の幼虫期における微生物との共生についてを書いた資料は見つけられなかったが、同じ昆虫類の他種事例から、チョウ類の幼虫期の微生物との共生を以下のようであろうと想像する。
・幼虫の消化管内には微生物がいて宿主と共生している
 (チョウ類が菌細胞を持つか否かは分からなかった)
共生微生物により葉は分解され幼虫の栄養源(主にカロリー源)となっている
・幼虫の餌(葉)は窒素源としては不十分であり、共生微生物空気中の窒素を固定して作り出した窒素化合物を利用している可能性がある。
・親から子への共生微生物の引き渡し方法は、
 ①細胞内共生の場合:親の体内で卵が成長する過程で共生細菌も菌細胞内で成長する
 ②消化管内共生の場合:親が卵に塗布する共生微生物入り分泌物を介して引き渡し

以上、完全に「これが真実だ」とは言えないものの、おおよその推測ができたので、これでよしとした。