タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

男たちだけの寂しげな色香

 ここ数日で急に、街のあちこちで金木犀の香りが漂い始めた。この夏の猛暑の影響で遅れていた金木犀の開花が、平年より10日ほど遅れで始まった。金木犀の香りはかなり強烈であるが、誰もこれが目的を果たせない空振りの香りとは思わない。

 上は金木犀が実を付けているところの写真であるが、金木犀の実は、通常日本では見ることができない。理由は、日本の金木犀のほとんどが雄木であり、実を付ける雌木が無いからである。金木犀は雌雄異株で江戸時代に中国より渡来したと云われるが、その際、香りの強い雄木だけが輸入され、その後挿し木で増えたため、日本に育つ金木犀は雄木しかない。植物は子孫を増やすため花を咲かせ、虫たちに花粉を運んでもらおうと香しい匂いを漂わせるが、日本の金木犀は、お目当ての雌木がない中で、あてもなく虚しい香りを漂わせていることになる。こんなことが分かって来ると、この香りが急に寂しげな色香に思えて来る。異性がいない世界で生きる意味なんてあるだろうか?