タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

金木犀の香り成分

 今日から10月、会社勤めをしていた頃は「下期も頑張ろう」と気合を入れ直したものだった。最近はそういう月締めとか期締めが無くなってしまい、人生がだらだら流れていくようであるが、その代わり季節の流れがより敏感に感じられるようになった。ここ数日、町中が金木犀の香りに包まれている。今日は金木犀の香り成分について調べてみた。(下の写真は近所のお宅の金木犀の大木)。


 上図は、色々なにおい分子に結合する嗅覚受容体が複数種類あり、それぞれの受容体からの電気信号を脳で処理して、人は様々なにおいを感知できていることを示している。金木犀の場合、におい分子にはどんなものがあるのであろうか? 調べてみると、金木犀の香りの主成分はγ-デカラクトン、他にリナロールという成分が含まれていることが分かった。

 有機化合物には「官能基」と言って特別な構造が存在し、γ-デカラクトンにはエステル結合が、リナロールにはヒドロキシ基が存在する。今日は、どんな嗅覚受容体がどんな分子構造と結合して、どんなにおいとして感知しているかまで調べることができなかったが、香水やアロマ物質の開発においては、その辺りのプロが日夜研究に励んでいるのだろう。

 金木犀を調べていて、意外なことが分かった。なんと金木犀は雌雄異株で、日本には原産地の中国から雄株が持ち込まれたため、日本にある金木犀はほとんどが雄株とのこと。従って、日本の金木犀は、毎秋花を咲かせ良い香りを振りまいているが、回りに受粉相手となる雌株がないため、花も香りも、「実り無き空振り」に終わっていることになる。なんだか、可哀そうな気持ちになった。

P.S.
 金木犀は、町中のありとあらゆるところに植えられている株が、ほぼ同時に一斉に咲き出し香りを放ち始める。このシンクロナイズは異常にも思えるが、町中の金木犀が同じDNAのクローン株だと分かればその謎も解消する。上でも書いたが、金木犀は雌雄異株で日本に雄株が持ち込まれ、挿し木により増えたため、どの株も同じDNAを持つ、人間で言えば「一卵性双生児の集団」のようなものになっている。従って、DNAが同じで環境条件が同じであれば、成長や生態も似たようなものになり、毎年同じ時期に揃って花を咲かせることになる。そしてこれは、日本の桜が、ソメイヨシノという交雑種のクローン株であり、それが故に毎年揃って満開になるのと同じ理由となる。