タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

不思議の国の僕

 昨日、今年のノーベル物理学賞が、「量子もつれに関する実験などで量子情報科学の分野を開拓した」欧米の3氏に授与されると発表された。「量子もつれ」とは、またまた凡人には理解できない不思議の国の話となる。

 上図は、宇宙の「物質」、「ダークマター」、「ダークエネルギー」の割合を示す。我々に見える(観測できる)物質はたった5%しかない。科学技術がこんなに進歩したというのに、我々人類の回りには、まだ見たことも触ったこともない、そして、こんなものだと想像すらできないものが95%も残されている。これは正に「不思議の国」である。白うさぎを追いかけて迷い込まなくても、この国はこの世の世界に寄り添うように存在するのだから、時々その片鱗を見せてくれる。
 「量子もつれ」も不思議の国の現象だと思えば良い。量子もつれを「量子多体系において現れる、古典確率では説明できない相関やそれに関わる現象」と説明されてもさっぱり分からない。ただ、量子コンピュータはこの現象を応用して計算するので、我々は、不思議の国の現象をこの世の人間世界に適用して、生活をより豊かにしようと考えていることになる。
 「量子もつれ」の関係にある光のペアの間では、情報を瞬時に移す「量子テレポーテーション」が生じる。テレポーテーションとは瞬間移動を意味し、まるで、少年時代に読んだSF小説の世界での出来事が、不思議の国では日常茶飯事の現象として起きていることになる。先日のブログで「光速を超えるもの」を扱ったが、不思議の国では、情報が瞬時に伝わり、つまり光速を超えることになる。この瞬間移動を身近な例で説明すれば、以下のようになる。
 『あなたが今夜空を眺め、シリウスの光を確認したとしよう。この光は、8.6光年離れたシリウスから、8.6年前に発せられたものであるが、宇宙空間を電磁波として伝わってくるので、あなたの目に入るまでは、光の粒ではなく、半径8.6光年の巨大な球面の波として存在する。この巨大な波の一部が、あなたの視細胞に捉えらえた(観測された)瞬間、量子テレポーテーションが生じ、観測情報が巨大な波の隅々まで伝わる。そして巨大な波は一瞬にして一粒の光子となり、持っていたエネルギーを視細胞に渡し、あなたが「見えた」と知覚する』

 大学生の頃は、相対性理論量子力学も、訳の分からない厄介なものだと思っていた。老成して見方が変わった。不思議の国には面白いことが一杯あると思えば良いのである。不思議の国の探求は死ぬまで終わらない。