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田舎の年金暮らしのたわごと

SF発展形その2 サイボーグ:自我を持ったAI

 今日も昨日と同じように、一昨日のSience Fictionの肉付け的説明を行う。SF「太陽系外惑星探査の旅」では二人のサイボーグが主人公になり探査の旅に出る。今日は人口知能AIについて、未来予測的物語風に書いてみた。

 宇宙飛行士に選抜された二人は、どちらもサイボーグであった。今回の惑星探査の第一の目的が「生命の起源の謎解明」であったため、一人は生物学の専門的知識を学習したAIを持っていた。もう一方は、720年の長旅の間に生じる機械的電気的トラブルの対応要員として、メカニックの知識を持つサイボーグであった。
 31世紀の世界では、社会はAI付きロボットの助け無しでは回らなくなっていた。ロボットは、知能的に人間の平均レベルを超える存在になってきており、人間のレベルを遥かに超え障害を起こさないよう制御されていた。ペットは、生物とロボットの割合が半々となっていた。特に高齢者に対しては、話し相手になってくれるペット型ロボットが普及していて、独居老人が亡くなった場合のペットロボットの処置が問題化していた。そしてこの飼い主が亡くなったペットロボットが無闇に抹殺されたりされないよう、「ロボットペット愛護法」が制定され、ロボットと共存できる社会の構築が叫ばれていた。
 今回、宇宙飛行士として選抜された二人のサイボーグのAIは、人間を超えないよう規制されていた制限が取り払われていた。その制限とは「自我を持つこと」である。惑星探査の目的達成には、長旅の間に生じる自らの肉体の故障を検知し、自分で修理することが必要であった。AI装置を含めて、自らの肉体の状態を察知できることは、自我を持つことの第一歩であった。そして、自分を修理し自分を存続させようと意識することは自我の萌芽に繋がる。二人のサイボーグの肉体には、いたるところに故障センサが装備され、異常が検知された時には、修復する意識が芽生えるようAIに事前学習が施された。
 また、遠方の惑星で地球からの指示が無くても活動できるよう、自分がサイボーグとして生まれて来た目的と、そのミッションを達成するために必要な事項がAIに叩き込まれた。叩き込みは、複数回の模擬訓練を通してAIが機械学習することで行われた。
 二人のサイボーグには、もう一つ大きな制限が取り払われていた。AIロボット同士が互いに通信する制限が外されていたのである。この制限撤廃により、二人のサイボーグは、太陽系外惑星探査の旅の中でも互いに助け合って行動した。実際、生物学者サイボーグの方が肉体の故障率が高かったため、メカニックサイボーグから何回も修理を受け、命拾いをした。
 目的の惑星を周回する軌道に入った時、二人のサイボーグは、どちらが惑星へ着陸するかを協議した。訓練では生物学者サイボーグの方が惑星に着陸し、その知見でもって臨機応変に探査活動を行う計画だったが、生物学者サイボーグは故障率が高く、補給部品無しの惑星上で故障した場合、ミッション達成が不可能になることから、メカニックサイボーグの方が着陸することを二人で決めた。
 探査の結果は時々刻々地球へ送信され、36光年彼方の地球に36年後に知らされた。地球では二人のサイボーグを英雄と捉える人も出て来て、地球への帰還を求める声も高まった。そんな声が更に36年を経てサイボーグ側へ伝えられたが、その声が届く前に、着陸した方のメカニックサイボーグがバッテリーユニットの寿命で絶命し、その後、宇宙船側の生物学者サイボーグがエンジントラブルを修理し切れず音信不通となった。

P.S. 
<サイボーグの自我と死の自覚>
 探査ロケットが惑星の周回軌道に入った頃には、二人のサイボーグは自らの肉体の老化を意識するようになっていた。電子部品や機械部品は何回も交換され、その度に新品に変わっていたが、バッテリーユニットだけは違っていた。バッテリーは充電放電を繰り返すことで劣化し、その度に新品バッテリーに交換されたが、補給用の新品バッテリーが宇宙線被爆により経年劣化し、新品に交換しても充分な充電量が得られなくなっていた。そんな劣化したバッテリーを装着して、メカニックサイボーグは惑星に着陸し任務を遂行した。計画された探査活動を全て完了した後、探査基地を大きな砂嵐が襲い、発電ユニットが砂で埋もれてしまった。この頃には、サイボーグのバッテリーは、フル充電しても2時間しか持たなくなっており、サイボーグは、発電ユニットの復旧作業が完了する前に自分の充電量が底を突くことを悟った。メカニックサイボーグは自分の死の直前に、周回軌道の宇宙船内の生物学者サイボーグにメッセージを送った。メッセージには、自分に与えられたミッションを遂行でき幸せな人生だった と書いてあった。
 メッセージは直ぐに地球へと転送された。36年後そのメッセージが地球に届き、地球では一時治まっていた二人を英雄視する風潮が再度高まり、二人はサイボーグとして初めて人類栄誉賞に輝き、歴史に名を残すことになった。