タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ヤクルト1000はどのように効くのか?

 最近は日の出が遅くなってきて5時代はまだ暗い。起床時刻も夏の4時代後半から5時代後半へと遅くなってきた。もう直ぐ6時代に突入することだろう。私は目覚まし時計を使わない主義なので、サーカディアンリズム(概日リズム)も日の出とともに変化する。
 今年の流行語大賞候補に「ヤクルト1000」が選ばれた。今日はヤクルト1000が睡眠にどう作用しているかを調べた。
  
 上図はヤクルト1000の効果を示す試験結果である。学術試験を控えた大学医学部の4年生を2つのグループに分け、一方は「シロタ株ヤクルト」を、他方は味や外見は同じ「フラセボ飲料」を毎日1本、学術試験までの8週間飲み続け、唾液中のコルチゾールの濃度を比較した。シロタ株ヤクルトを飲んだ方のグループが、コルチゾール濃度を低く抑えられていることが分かる。

 上図は1日の日周リズムの中でホルモンがどう変化するかを示している。日周リズムはサーカディアンリズムとも呼ばれており、日中活動期のコルチゾール上昇と夜間休息期のメラトニン上昇、この2つのホルモンの分泌量周期変動にて制御されている。
 コルチゾールは副腎皮質ホルモンで、明け方から午前中にかけて多く分泌され、代謝を制御し日中活動を維持する。コルチゾールストレスホルモンとも呼ばれ、敵がやってきたときにそれに構えるような体内の状態を作る。上述した内容をまとめると、ヤクルト1000は以下のように働いて効能を発揮することになる。
「現代はストレス時代であり、コルチゾールの分泌量が夜になっても低下しない人が多くいる。そんな人がヤクルト1000を飲むと、コルチゾールの分泌が抑えられ、結果サーカディアンリズムが正常になるので良質な睡眠をとることができる」
 さてここで、科学的な目でもって再考する。まず、今回の調査では、ヤクルト1000を飲むことで何故コルチゾールの分泌量が抑えられるのかの関係性が不明であった。乳酸飲料を飲み続けて腸の調子が良くなるのは何となく分かるが、腸の調子の良さがどう睡眠に効いているのか分からない。また、ヤクルト1000ばかりでなく他の乳酸飲料も効くのかもしれない。シロタ株のこんなところがこういう風に効くとは示されていないのである。また、良質な睡眠を科学的な指標で測定した試験(例えば脳波測定による睡眠の深さ試験)は無かったし、コルチゾール濃度試験も試験者の数が20数名ずつなので、有意な差を見い出す試験者数としては少ない。つまり、科学的な裏付けが薄いまま、評判が評判を呼び大ヒットになったという感じなのである。