タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

富山湾の特異性

 ホタルイカ漁が最盛期に入って来た。そして我が家の食卓にも このご馳走が並び始めた。昨年は新型コロナで中止となっていたホタルイカ漁観光遊覧船も、今年は乗客人数を制限してやっているようだ。その案内Webによれば、午前2:30 受付、3:00 出航、3:15 定置網に到着して漁を見学、4:30 帰港 という流れになっている。
 また今年は気温が高めで、蜃気楼も例年より早く発生し始めた。この時期、富山地方局のラジオ放送では、天気予報の後に蜃気楼予報が流れる。「今日の蜃気楼の出現確率は20%です」という風にお知らせが流れるのである。
 ホタルイカも蜃気楼も富山の名物であるが、富山湾の特異性が大いに関係している。今日は富山湾について調べてみた。

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 富山湾の特徴の一つが水深が深いことである。上図左は富山湾の水深図であるが、ホタルイカ漁が盛んな滑川市の沿岸では、ちょっと沖へ出るだけで水深が200mにもなることが分かる。ホタルイカは普段、水深200~600mに生息しているが、春の産卵期には岸近くまで集まってくる。つまり、富山湾ホタルイカ漁は、岸から非常に近いところに漁場があることになり、これは、新鮮なホタルイカを食卓へ提供できることを意味する。
 次に右図は、富山湾およびその周辺の地形の3次元立体画像であり、北から南に向かう方向で見たものである。富山湾の延長線上に富山トラフがある。トラフとは細長い海底盆地であり、水深の深いところが南北に細長く続いているのが分かる。富山トラフを南へ延長すると、フォッサマグナの西縁である糸魚川ー静岡構造線にぶつかる。3/13のブログでフォッサマグナが今から1600万年前にできたと書いたが、この時はまだ、富山トラフとフォッサマグナは一続きの海溝であったと思われる。その後、日本列島中央部が隆起してフォッサマグナは陸地となったが、富山トラフの方は隆起せず、逆に沈降して現在の富山トラフとなった。
 富山湾相模湾駿河湾の3つは日本3深海湾である。相模湾駿河湾フォッサマグナの南側にあり、フォッサマグナができた後、伊豆半島が隆起し両側が沈降したため、現在両湾とも深い湾になっている。

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 上図は富山県一級河川を示している。この湾に7本もの一級河川が栄養分をたっぷり含んで注いでいる。特に県東部の河川は、3000m級の立山連峰から短い距離を一気に流れ落ちる急流となっていて、ミネラルと酸素をたっぷり含んでいる。これらの栄養分が流れ込む富山湾では、プランクトンが豊富になり、それを餌とする魚も集まって来る。また富山湾は水深が深いため、300mぐらいまでの 対馬暖流系水 とその下の 日本海固有水 の2層に分かれており、これにより豊富な魚種の湾になっている。

 富山湾立山連峰の高低差は4000mもあり、これは世界的にも珍しい地形である。春には、この高低差を雪解け水が短時間で海まで流れ落ちるため、晴れて風がない日には、冷たい海水で冷やされた下層の空気と上層の空気の間で光が屈折し蜃気楼が発生する。f:id:TatsuyaYokohori:20210406134432p:plain   上の写真は富山湾の西側に位置する雨晴海岸から見た立山連峰である。峰々に雪が残るこの時期は正に絶景となる。






池江璃花子が東京五輪代表に

 昨日の競泳日本選手権の女子100mバタフライで池江璃花子選手が優勝した。そして東京オリンピックの400mメドレーリレーメンバーとしてオリンピック出場が内定した。
 レース後のインタビューで涙をこらえながら必死に話す姿に、こちらも涙が止まらなかった。彼女の出身地である東京都江戸川区に2015年まで住んでいた私としては、こんなすごい子が近所にいたのかという思いである。おめでとう。あなたが言う通り、努力は必ず報われる。
 もう、世論調査は無視して、この夏の東京オリンピックを是が非でもやらなければいけない。若い人の燃えたぎる夢を、年寄りのぼんやりと感じる不安で潰してはいけないのだ。

鶏が先か卵が先か

 「鶏が先か卵が先か」という問題がある。この言葉については、どちらが先か分からない例として使ったことがあるが、真面目な問題として考えたことがない。今日はこれを、「生物の進化過程を踏まえての問題」として考えてみる。
 まず卵を、ニワトリの卵ではなく、一般的な動物の卵と捉えた場合、卵は有性生殖が生まれた太古の昔に既に存在していたので、これは、爬虫類から鳥類に進化する前に卵というものは存在していたことを意味し、当然「卵が先」ということになる。
 次に、卵をニワトリの卵 と捉えた場合、これは、『進化の過程のどの時点で元始ニワトリからニワトリへ種として分化したか』という問題となる。私はつい最近まで、進化は突然変異がきっかけで起きると思っていたので、その考えに基づけば、ニワトリへの種の分化は、精子卵子の中の遺伝子に突然変異があった時に起きると考えられるので、「卵が先」となる。
 しかしながら、昨日のブログでも書いたが、進化は突然変異による遺伝子の変化で起きるものではなく、その遺伝子をどの時期にどのくらいの時間発現させるかの微妙なさじ加減の変化で起きると考えられるので、この変化は非常に小さい連続的な変化となり、どこで種が分化するかの判断も難しくなる。また、親に加えられた環境ストレスが生殖細胞へ伝達され、微妙なさじ加減の違いが生まれたと解釈すれば、親で分化したとも言えるし卵で分化したとも言える。また、進化は1個体ではなく、同一環境下にいる集団が揃ってこの微妙なさじ加減を変化させることから生じると考えれば、その集団の個体毎に分化の程度が異なることになる。
 結論としては、『種の分化は、1個体の突然変異による断続的な変化を起点とするのではなく、集団の中の個体毎の小さい連続的な変化の積み重ねと総合で起きるので、それが卵の時点で起きたか成熟体で起きたかを議論するのは無意味』となる。

キジを見ながら進化を考える

 今朝日課のウォーキングをしていたら、道の右側5m先の人家の生垣から突然キジが出てきて、道を横切り、左方の田んぼの方へ駆け抜けて行った。f:id:TatsuyaYokohori:20210403223906p:plain
 上図は最近撮った雉たちである。撮影場所は左から、空き家の庭、自宅裏の田んぼ、農家の庭先である。人間である私の目から見ても美しいと思えるので、メスの雉から見たら、さぞ「かっこいい」、「胸キュン」的な存在になるのであろう。このように美しい姿に進化する原動力は何であろうか?
 まず、羽毛の色がこのようにカラフルになるのは、発色する色素物質が沢山あると思われた。ところが調べてみると、鳥類の羽毛の色も3/22の「髪の毛の色を決定する遺伝子」で説明したユーメラニンフェオメラニンの2つの色素物質で発色されていることが分かった。つまり、発色物質においては人間も鳥類も同じということになる。どんな色になるかは、羽毛のケラチン組織へ輸送される色素物質の種類と量が影響し、模様は輸送のタイミングで決まるそうだ。
 ダーウィンの進化論は「自然選択」と「突然変異」の2本柱で構成されているが、雉の美しい羽毛の模様は「突然変異」によるものではないと思われる。なぜならば、色素物質が哺乳類や鳥類で共通であり、それを産生する遺伝子も両類でほぼ共通であることから、これらの遺伝子が、雉の美しい色模様を作るために突然変異にて雉だけに出現したものではないことは明らかであるからだ。また、よく「突然変異で白毛になった動物」の話を聞くことがあるが、これは突然変異で色素物質を作れなくなったことを意味しており、このような動物は劣性遺伝で子孫を残すことができず、よって進化の推進役にはなれない。いずれにしても、突然変異がキジを美しい姿に進化させるきっかけとなっていないことは確かである。それでは、形質変化はどのようにして起こるのであろうか?
 進化を羽毛の発色の例で考えれば、ケラチン組織へ送られる色素物質の配合度合いが羽毛の色の変化を引き起こし、そのタイミング(成長過程のどの時期にどの位の時間 色素物質が送られるか)が模様の変化を引き起こすとのことなので、このような謂わば「微調整」が形質変化を引き起こしていると言える。これは、遺伝子は変化しなくても、その遺伝子が発現する時期と時間の変化が形態変化を引き起こしていることを意味する。そしてこの「微調整のやり方」が親から子へと遺伝するから生物は形質変化し、進化するのである。
 一方で「自然選択」の方は進化を推進する力になっていると思える。クジャクはキジ科の鳥であり、オスは美しい羽根を広げてメスを誘う。オスの羽根が美しければ美しいほど、多くのメスと交尾ができ沢山の子孫を残すことができる。よって、キジやクジャクの場合、自然選択とは「メスからの選択」と言っても良い。そしてこの選択がキジ(オス)を美しく進化させる推進力として働くのである。
 人間の世界では、「三高」といって、身長が高い、学歴が高い、年収が高い の3つが、女性が結婚相手に求める3条件と言われている。これが進化の推進力として働くなら、将来、人間の身長はもっと伸びるのであろうか?



選択性除草剤

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 家庭菜園のアスパラが伸び始め、ニンニクが大きくなり、スナップエンドウに支柱が必要となってきた。春の日差しを浴びながら菜園にいると、ついつい雑草が気になり草むしりが始まる。今日は雑草と除草剤について調べてみた。 
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 雑草は大きく「イネ科雑草」と「広葉雑草」に分けられる。上図で分かるように、成長点が下方にあるイネ科雑草の方が、刈られても踏みつけられても耐え忍ぶ強い雑草のようである。

 除草剤の中で、作物は枯らさず雑草だけに効く「選択性除草剤」というものがある。抗生物質が、人には害を与えず細菌だけを殺すのに良く似ている。選択性除草剤の例としてDCPAというものがあり、イネには影響を与えず雑草であるタイヌビエを枯らしてしまう。イネは体内に酵素アリルアシルアミダーゼをもっていて、この酵素がDCPAを代謝・分解し無毒なものに変える能力がある。DCPAを散布されると雑草は光合成ができなくなり枯れてしまうが、イネは酵素により、DCPAを速やかに代謝・分解し、無毒なものに変えるので、散布2日後には回復し成長にはほとんど影響がない。
 さて、私にとって草むしりは、暇をつぶして無我の境地に入れる最高の仕事である。除草剤は必要ない。



 

 

陰のワクチン

 大阪府が国に「まん延防止措置」を要請した。今後この措置で第4波がどの程度に抑止できるか注視したい。今日は3/15のブログの中で行った諸外国との感染状況比較を再度してみる。
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 上図は感染が再拡大しているイタリア、フランス、ドイツの状況である。イタリアは3/15から再度のロックダウンに入った。これが効いてか最近ピークアウトした感がある。ただ高止まりになる可能性もあり、ロックダウンはもうしばらく続くだろう。フランスは3/20から3度目のロックダウンに入ったが、今回は緩めのロックダウンであり、外出は自宅から10キロ以内なら許可証はいらず、午後7時まで時間は無制限である。ただ、なかなか感染が収束の方向へ向かわないので、ここへ来てマクロン大統領が学校閉鎖や都市間移動制限を含む更なる対策を打ち出すようである。ドイツはロックダウンではなく昨年12月からの行動制限を続けてきた。制限期間は1月に2度延長されて2月14日までとなり、それが3月7日まで、3月28日までという形で何回も延長された。しかしながら感染が一向に収束に向かわないので、メルケル首相は24日に「イースター(復活祭)期間中にも新型コロナウイルス対策の厳格なロックダウンを実施する」と表明したが、1日で取り消した。
 このようにして、上記欧州3カ国は、昨年3月のロックダウンに比べてはるかに「緩いロックダウン」や「行動制限」で新型コロナウイルスと戦っているが、大変苦労していて、まだ成果が見えてきていない。
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 上図はワクチン接種が進んでいる英国、米国、イスラエルの感染状況である。感染が収束の方向に進んでいることが見てとれる。
 ここで、1日の新規感染者数を人口10万人当たりで比較すると、日本の1.6人/10万人に対し、英国:7.5、米国:19.3、イスラエル:4.8 となる。ワクチン接種が進み感染が収束に向かっているイスラエルより、日本の感染レベルが低い。これは、日本人の多数の人が 陰のワクチンを既に接種していることを暗示する。ワクチンの名前はFactor Xである。
 





黄砂の朝に思ったこと

 今日は年度末、富山では黄砂でもやの掛かる朝を迎えた。
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 1年前の今日、退職した。前日に志村けんさんが新型コロナで亡くなったニュースが流れ、富山でも初の感染者が出ていた。不安の中で第2の人生がスタートした。そして、この1年間はコロナに明け暮れた1年間となった。
 昨日、文科省は高校の教科書検定結果を発表したが、その中には、主権者教育を担う「公共」の中で、ジェンダーLGBTの記述も増え、新型コロナウイルスも登場したという。未来を担う若者には、「自分で考える力」を身に着けて欲しいと思った。
 ジェンダー平等は今では当たり前の主張であり、これに異を唱える人はいないと思われるが、最近はその平等が、「機会の平等」ではなく「結果の平等」を目指し、色々な政策が進められて来ている。先月問題になった森氏の女性蔑視発言も、元はと言えば文科省からの「女性委員の構成比率を40%以上にする」がきっかけであった。委員になる資格は男女平等に与えられているが、その結果としての委員の男女比率が均等になっていないから、「改善が必要」と文科省は言っているわけである。
 今では、会社の人事登用においても、能力が同じなら、あるいは多少劣っていても、男性ではなく女性の方を登用すると言われている。本来不平等であることが、ジェンダー平等への施策になっているわけである。
 「機会の平等」は裏では「自由競争」を意味する。資本主義では、誰でも資本家になって金儲けができる。しかしながら、資本家と労働者の間に貧富の差ができてしまい、「結果の平等」を達成できない。これを改善すべく、累進課税にて金持ちから沢山税金を取って貧困層への生活支援に当てているわけだが、貧富の格差は開く一方である。
 このようにして、世の中には「ままならないこと」が沢山あるわけだが、高校教師においては、「生徒に対し課題となる題材を与え、それを皆で議論することで、自分で考える力を付けさせる」よう指導して欲しいと願う次第である。