タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

聴覚の進化

 今日は昨日の続きで耳(聴覚)の進化について調べた。
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 昨日のブログで、三半規管が魚類の先祖において既に備わっていたと書いた。上図はヒトの耳の構造を示すが、今日は三半規管の周囲に配置された「音を聴くための小器官」の進化を扱う。
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 上図は魚類の内耳の構造を示す。魚類には耳たぶ(耳介)も耳の穴(外耳道)も無いが、頭の中には内耳が1対ある。その内部には、姿勢を感知する三半規管や、音を感知する小嚢などの耳石器官があり、ここで音波(水の圧力の変化)を感知する。
 水の中を伝わった音波は、人間の鼓膜の役割をする鰾(うきぶくろ)を振動させ、これが内耳に伝わる。このとき、内耳の中にあり、動毛や不動毛で支えられている耳石が動くと、動毛が刺激され、脳(中枢神経)に情報が送られて音が認識される。鰾(うきぶくろ)からの振動は、鰾と内耳を繋ぐウェーバー器官ウェーバーの小骨)により骨伝導にて内耳まで伝えられる。
 なお魚類は、蝸牛管を持たないので音の高低を聴き分けることはできない。
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 上図は両生類の代表であるカエルの耳の構造を示す。魚類から両生類への進化に伴い、陸上への進出という高いハードルがあった。聴覚については、非圧縮流体の水から圧縮流体の空気へと音の媒体が変わったため音圧レベルが微弱になった。このため体表面に小さな音圧を感知できる鼓膜を形成し、鼓膜での振動を内耳まで伝達するあぶみ骨を備える形に進化した。
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 上図はワニ(爬虫類)と鳥類の内耳の構造を示す。爬虫類への進化において、内耳に蝸牛管を形成したことで、低音から高音まで聴き分けることができるようになった。下は蝸牛管の構造模式図である。蝸牛管は細長い管であり、この中の液に音波振動を加えた場合、高周波は減衰が速く入り口付近で減衰してしまい、一方で低周波は減衰が遅く管の奥まで振動が伝わる。蝸牛管を有する動物は、この物理法則に則り、低周波から高周波まで幅広い音域の音波を聴くことができる。
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 爬虫類や鳥類の蝸牛管は直線状だが、ヒトの蝸牛管は渦巻状でコンパクトになった。我々人類は、この蝸牛管を有することで音楽を楽しむことができる。コウモリはこの聴覚を更に進化させ、反響定位という方法で夜でも獲物を捕らえることができるようになった。