今日は二十四節季の大暑。暦通り朝から異常に暑い。アブラゼミも本格的に鳴き始めた。私はこれまで、セミは羽化後1週間の寿命だと思っていた。「八日目の蝉」というドラマもあったが、成虫となったセミの寿命を1週間とすれば、このドラマタイトルが意味するところは、「死が目前に迫った蝉」となる。
最近(2016年)になって、この「セミの寿命は1週間」という俗説が間違いであると判明した。当時中学3年生だった少年(植松蒼さん)の夏休みの研究で明らかになったのである。彼は網でセミを捕まえて羽に油性ペンで番号を書き、再度捕まえ生きている日数を確認する方式で、セミが何日間生存していたかを割り出した。彼は実際、アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミなど計863匹を捕まえ、そのうち15匹を再度捕まえた。彼の研究結果によれば、生存確認日数の最大値は、アブラゼミ32日、ツクツクボウシ26日、クマゼミ15日だったとのこと。
この事実を知り、新たな疑問が生まれた。私は今まで、「セミは交尾後、メスは産卵して死ぬ、オスも交尾達成後直ぐ死ぬ」と思っていた。カマキリのオスは交尾後メスに食べられて死ぬ運命にあるが、セミも同じように交尾後はオスもメスも直ぐに死ぬ、だから寿命が短命になると思っていたのである。ところが、セミの寿命が2週間~1ヶ月もあることを知ると、「交尾後オスも直ぐ死ぬ」というのが私の思い込みであり、間違いだったと気付く。実際、セミのオスは交尾後も生き続け、2回も3回も交尾するものもいるらしい。
これを知ると、セミに対する認識が変わってくる。セミはオスとメスほぼ同数生まれる。メスは交尾後産卵して命が尽きる。一方でオスは交尾後も生き続け、複数回交尾する個体もいる。そうなると、一度も交尾できずに一生を終えるオスもいることになる。セミのオスは力を振り絞って鳴いているのである。ここにこんなに力強いオスがいることをメスにアピールするため、必死に鳴いているのである。力強いオスは何度も交尾ができ子孫を沢山残すことができるが、弱弱しいオスは子孫を残せず命が尽きるのである。そんな思いで改めて聞くと、あんなにうるさく聞こえていた鳴き声が、妙に愛おしく心に響いてくる。期せずしてメスとの逢瀬を実現できなかったオスたちに言いたい。君たちも長い土中生活を生き抜いた立派な勝者であると。