タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

日本語は数字を扱うのに適した言語?

 先日、首相会見で岸田さんが「ひとだんらく」と言ったのを、アナウンサーが「いちだんらく」と言い直していた。日本語には音読みと訓読みの2つがあり、一般の日本人なら、「ひとだんらく」でも「いちだんらく」でも通じるのだが、アナウンサーが話す標準語の世界では「いちだんらく」が正しいみたいである。ただ、「一工夫」「一苦労」「一安心」のように「ひと〇〇」と読む語も多くあるので、首相が間違えるのも無理はない。
 数字の読み方が二種類あるのは、日本語を勉強する外国人にとっては、さぞや苦痛の種であろう。例えば、「4月4日4時4分」を日本人なら音読み訓読み織り交ぜながらスムーズに言えるが、英語圏の人がそれを聞いたらきっとびっくりするに違いない。4回出る4の発音が全部違うのだから。
 ただ日本語は、大きい数字を読み上げる分には分かり易い言語である。いくら桁数が多かろうが、数字の後に桁名称(十、百、千、万、億、・・)を添えて左から順番に読み上げるだけだからである。そろばん教室では読み上げ算というものを行うが、日本語で読み上げるから高速でできるのであって、これが欧米系の言語では勝手が随分違ってくる。例えばフランス語では96を、4つの20と16 という風に発音する。そうなると最初の4という発音(quatre)を聞いただけでは、それがどんな数値を意味するか分からない。そして桁名称が次に来るのかその次に来るのか、あるいは来ないのかも分からない。フランス語で読み上げ算をしたら、最初の数字の聞き取りに苦労し、その数値をそろばんに置く間に、次の数字の読み上げが終わってしまっていてお手上げとなる。
 日本人は暗算が得意で、一方で外国人は苦手だと言われている。小学校の低学年で掛け算九九を覚えるが、普通の日本人の子供ならそれほど苦もなく覚えることができる。これは、九九が日本語の特性を生かして、基本音読みでありながら、暗唱し易いよう ところどころ読み方がアレンジされているからである。一方で英語では、この九九を「Two times two equals four. Two times three equals six.」という風に何等簡略化せず、またリズムもメロディーも付けないで丸暗記する。覚える文もご丁寧に、主語+動詞+補語の基本文型の形を崩していない。欧州言語圏の子供たちは、基本このスタイルで書かれた九九の文章を丸暗記しないといけない。この丸暗記ができず、小学校低学年で算数が嫌いになる子や掛け算の暗算ができない子が相当数出てしまう。
 最後に、日本語は数字の暗記に適した言語である。794年を、「鳴くよウグイス平安京」のように覚えることができるのも日本語のお陰であり、我々日本人は日本語ならではの特技を持った民族と言える。

P.S.
<序数の意味を持ち合わせながら数字が入らない単語>
1.月の名前
 英語で、NovemberはAprilの何ヶ月後かと問われても直ぐには答えられない。英語圏の人にとっては、AprilやNovemberが1年の中で何番目の月であるかが分かってないので、Aprilから May、Jun、July と指折り数えることになる。ところが日本人では、11ー4=7ヶ月と即座に答えることができる。
2.干支
 私が幼少の頃、干支の動物の絵を描いたトランプがあった。1から12までが干支の動物であり、13はライオンの絵が描いてあった。このトランプを使って七並べをよくやったので、私の頭の中には、3番寅、7番馬、11番犬 というように干支の番号が刻み込まれている。であるから、例えば、兎年(4番)のお兄ちゃんと年が離れた酉年(10番)の妹が何歳違いかを直ぐ計算で求めることができる。
3.曜日の計算
 中国語では、月曜日、火曜日を1曜日、2曜日という風に数字(序数)で表す。であるから、例えば水曜日(3曜日)の10日後が何曜日であるかを、3+10-7=6と計算して、6曜日(土曜日)と直ぐに導き出すことができる。