タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

オミクロン株BA.5の本当の姿

 昨日、新型コロナの感染者数が全国で18万人を超え、2日連続で過去最多を更新した。富山県内でも1442人と初めて千人を突破した。しかしながら政府の「行動制限は行わない」という基本方針は今のところ変わっておらず、またメディアの論調も「経済を回しながら重症者数を注視して」と落ち着いたものになっている。2年半の経験を通してやっとここまで(感染者増加に大騒ぎしない)来たかとの感である。
 今回は第6波の時と同じオミクロン変異株であるが、第6波より更に変異したその派生型のBA.5が流行っている。感染者数の増加が急激であるが、これは潜伏期間が短く、短期間でウイルスを撒き散らして感染を広げるためである。一人が何人に感染を広めるかの指標として「実効再生産数」があるが、下表は、実効再生産数が同じでも、再生産に掛かる時間が短ければ、感染拡大がより急ピッチで進むことを示している。
 
 実効再生産数は感染者数に基づき計算で求められるが、この計算式の中に「平均世代時間」というものがあり、これは、何時間掛けて次世代を産み出すかを意味する。この平均世代時間は、オミクロン株以前は5日とされていた。それまでの新型コロナ感染症の病状は、「平均で発症まで7日、その2日前から感染を広める」ぐらいのスローなイメージであった。ところがオミクロン株が流行って以降、この平均世代時間が2日に改定された。潜伏期間が半分以下になり、それに応じて感染拡大スピードが2倍以上になってしまった。ただこの変異と変化により、この感染症はいよいよインフルエンザに近い病になってきた。
 BA.5は高熱が出て喉の痛みを訴える人が多い一方で、従来からあった味覚異常、嗅覚異常はほとんどないとのこと。このことからも、インフルエンザに近い病になってきたことが伺える。オミクロン株出現以前は、呼吸器系の入り口(口と鼻)が主な感染部位だったこのウイルスが、オミクロンへ変異以降は、より内部(咽頭)を感染部位にするように変わったみたいである。
 それでは、何故オミクロン以前の株の方が重症化する割合が高かったのであろうか? これは私の推測だが、口頭内で増殖するウイルスが誤飲で肺まで侵入してしまうことがあり、肺炎を引き起こしたからではないだろうか? 一方で咽頭で増殖するオミクロン株は、「喉が痛くて唾も飲み込めない病状」になってしまうため、ウイルスがその奥の肺まで行く可能性が少なくなったのではないだろうか?
 さて、ウイルスの本当の姿は、どうすれば正しく掴むことができるであろうか? 人間はウイルスを、自分が被る被害の程度で推量しようとする。例えば、「BA.5はそれまでのオミクロン株BA.2より感染スピードが1.27倍になっている」と言うように。ただこれでは、「群盲象を撫でる」となっていて、本当の姿が見えてない。もちろん、ウイルスの特性は多数あり、本当の姿とは、その特性全てを正しく理解することで把握できることであるが、これをあまり忠実にやろうとすると「木を見て森を見ず」になってしまう。本当の姿を把握する一番の近道は、ウイルスの代表特性を理解することである。そして、オミクロン株の一番の代表特性は、「平均世代時間がそれまでの5日から2日になった」ことで表される。この変化は、オミクロン株が、同じ新型コロナウイルスと言いながら、それまでとは全く別のウイルスに変わってしまったことを示している。そして変わった結果、インフルエンザウイルスと似た症状を引き起こすウイルスになった。従って、オミクロン株BA.5を「新型コロナウイルス」と捉えるのではなく、「新型インフルエンザウイルス」と捉える方が良く、より適切な対応策に繋がることになる。