タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

睡眠研究最前線

 梅雨明け後、寝苦しい夜が続いている。今日は睡眠について調べてみた。

 上図は、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、睡眠の段階に違いがあることを示している。私は最近毎日のように夢を見ており、レム睡眠ばかりで眠りが浅くなったように思っている。

 上図は、年齢による睡眠時間の変化を表している。これによると、私の年齢での平均睡眠時間が6時間となっているので、時間だけを見れば私も平均ぐらいであり、要は、睡眠の「量」よりも「質」が問題になるのであろうと思った。

 最近、睡眠サプリメントとして GABA という言葉を良く聞く。上図はGABA作動性ニューロンが睡眠システムの中核を担っていることを示している。また一方で、覚醒システムは、脳幹に局在するモノアミン作動性ニューロンとコリン作動性ニューロンの2つにより制御されており、睡眠と覚醒は、この相反するシステムの優勢劣勢により決まることを示している。
 
 上表は、覚醒システムとして働くモノアミン作動性ニューロンとコリン作動性ニューロンの活性フェーズの違いを示している。両者はレム睡眠の時、活性度が大きく異なり、レム睡眠がコリン作動性ニューロンにより能動的に作られていることを示している。レム睡眠とノンレム睡眠とは全く別物であり、単なる睡眠の深さの違いではない。
 人間ばかりでなく、犬も猫もレム睡眠を行い夢を見ている。一般に哺乳類は、人間と同じようにレム睡眠とノンレム睡眠の双方をとることが脳波測定により確認されており、従って人間も含めて哺乳類は、夢を見るレム睡眠と脳をメンテするノンレム睡眠の双方を行う形に進化したことになる。それでは、レム睡眠の役割は何であろうか?(残念ながら現時点で解明されていない)。

 上図は、日本人により発見されたオレキシンの働きを示している。オレキシンはモノアミン作動性ニューロンが安定して働くように作用し、結果覚醒状態が安定的に維持される。逆に、このオレキシンを阻害すれば、覚醒が止まり睡眠に入り易くなる。これを応用した新しいタイプの睡眠薬も開発され使用されている。
 上図は、覚醒状態で眠気が溜まり、まるで ししおどし に溜まった眠気が、覚醒から睡眠へとスイッチが切り換わることで、ししおどしから流れ落ちる形で解消され、その後はまた覚醒モード(眠気蓄積モード)にスイッチされることを示している。一体全体、眠気の正体とは何であろうか?
 上図は、眠気の正体が、シナプス神経細胞結節点)におけるSNIPPsのリン酸化であることを示している。SNIPPs(睡眠要求指標リン酸化タンパク質)とは、断眠マウスのシナプスでリン酸化が確認されたタンパク質群で、眠気の指標となる物質である。すなわち眠気とは、リン酸化度合いが高いSNIPPsが数多く溜まることで蓄積されることになる。

 さて、睡眠に対する一番の謎は、「人間は何のため眠らないといけないのか?」である。ここから先は私の個人的な考察であり、真実だと保障できないことを断っておく。人は覚醒している間に色んな情報が脳に入り、脳では情報処理が行われている。今後生きて行くに必要な情報は、記憶として残さないといけないが、その記憶は、ニューロンニューロンの間のシナプスに、両ニューロンが連携して発火した証として残されている。証として残る実体の一つがリン酸化されたタンパク質であるが、記憶として残したいのはシナプスの強い連結状態であって、リン酸化度合いが高いタンパク質ではない。ノンレム睡眠は、高いレベルでリン酸化状態にあるシナプスを適正レベルへリセットし、そのシナプスの結合強度を適正にセットするために行われる。これにて新規記憶の登録と想起記憶の補強が行われる。シナプスリセットが完了した後、レム睡眠モードに移行し、結合強度が変わったシナプスの連携発火テストが行われる。この時に、喜怒哀楽を産み出す大脳辺縁系ニューロンも連携発火することで、記憶の意味付け(怖い記憶か楽しい記憶かという観点からの評価)が為される。このようにして、睡眠とは記憶の固定と評価に無くてはならない行為となり、脳を正常に作動させるための必須行為となった。