タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ミトコンドリアと老化と寿命の関係

 5/18のブログではミトコンドリアとの共生が進化の方向を決めたと書いた。今日はミトコンドリアが老化や寿命にどう関係するかを探ってみたい。

 上図は若齢細胞と老齢細胞でのミトコンドリアの働きの違いを示している。若齢細胞の中では、ミトコンドリアが産生した豊富なATP(エネルギー)により細胞も活発に活動しているが、老齢細胞では、ATP産生の低下に伴い細胞活性も低下する。注目すべきはミトコンドリアが産生する活性酸素であり、これが増え除去し切れなくなると、タンパク質・脂質・DNAが障害を受けることになる。ミトコンドリアの活動から生まれる活性酸素が、身体の様々な部分に損傷をもたらし生命は次第に衰えていくが、衰えが進むと、活性酸素の量も増え、除去する能力も下がり、老化が加速度的に進んでしまう。

 上図はミトコンドリアの電子伝達系を示す。ミトコンドリアの中では、有機物を燃やすことでADPをATPへ変換させている。このATP産生は、工程ⅠからⅤまでの複合体により、電子を順々に伝達することで行われる。この電子伝達は、60兆もあるヒトの各細胞毎に数千個もあるミトコンドリアの中で営々と行われるのだが、稀に電子リークが発生し活性酸素が生まれる。生物は活性酸素を除去する仕組みも備えているが、長い生命活動の中でその活動も低下し、活性酸素による損傷個所も増えていく。
 clk-1という遺伝子は、センチュウやマウスの実験で寿命を延ばす効果が確認された。この遺伝子を働かなくしたノックアウトマウスでは、野生型に比べ平均寿命も最長寿命も延びたのである。この遺伝子はCoQという蛋白質を産生し、このタンパク質はミトコンドリアの複合体Ⅱを補助する形でミトコンドリア内の電子伝達に関わる。このclk-1遺伝子をノックアウトされたマウスは、CoQの補助が低下するため、ミトコンドリアの働きが低下し穏やかなものになる。すなわちこれは、ミトコンドリアの活動をスローダウンすると寿命が延びることを暗示している。
 ネズミは短命でゾウは長生きであるが、「一生の間に行う呼吸数や心拍数はほぼ同じ」という考えがある。これは、ミトコンドリアの活性度を上げて激しく短く生きるのも、活性度を下げてゆっくりと長く生きるのも、トータルで産生される活性酸素量は同じ(=トータル被害量は同じ)であると考えれば納得できる。
 先日のブログでは、ミトコンドリアとの共生が「生」、「性」、「死」への進化を決めたと書いたが、「老」への道も決めたことになる。